後周期典型元素の特徴を活かした新奇なπ電子系元素ブロックの創製

2016 年度 実績報告書

• 研究領域: 元素ブロック高分子材料の創出
• 研究課題/領域番号: 24102005
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 大下 浄治 広島大学, 工学研究院, 教授 (90201376)
• 研究分担者: 大山 陽介 広島大学, 工学研究院, 准教授 (60403581)
• 研究期間 (年度): 2012-06-28 – 2017-03-31
• キーワード: 高分子合成

研究実績の概要

これまでの研究で、後周期元素とπ電子系の組み合わせを利用した新たな元素ブロックの合成に取り組み、その物性を明らかにするとともに、材料へのアプローチを検討してきた。今年度は、以下のような検討を行った。
１．ジチエノゲルモール（DTG）は、代表者らが独自に開発した元素ブロックであるが、これをポリチオフェン主鎖に導入し、物性およびトランジスタ特性に及ぼす影響を検討した。これにより、DTG骨格の導入がポリマー主鎖間の相互作用を促進し、トランジスタ特性に有効なキャリアのホッピングを改善することが分かった。また、DTGのゲルマニウム上に塩素基を有するDTGClを昨年度合成したが、この重合によりポリゲルマンに導いた。ポリマー主鎖上でのDTGのπースタッキングやσ－共役、σ－π共役などが確認され、マルチ共役系として興味がもたれることも明らかにした。DTGClのゾルゲル反応によって、多孔性のポリシルセスキオキサンに分散させることにも成功し、これらの薄膜のニトロ芳香族のセンシング機能を明らかにした。
２．フラン環が縮環したジフラノゲルモール、ジフラノシロールおよびフラノチエノゲルモールを初めて合成することに成功した。これらは、類似のチオフェン誘導体に比べて、高いHOMOとLUMOを有し、チオフェンの硫黄原子を１つずつ酸素に置き換えることで、これらの電子系の電子状態を段階的に制御できることを見出した。
３．新しい元素ブロックとして、カゴ状のオリゴゲルマセスキオキサンを検討し、これがケイ素誘導体よりも低いLUMOを有すること、光励起電子移動の電子アクセプターユニットとして機能することを見出した。
４．スピロ（ジピリジノゲルモール）（ジチエノゲルモール）が一重項酸素発生の光増感色素として利用できることを見出した。
以上の結果は、新規な元素ブロックの設計と合成、機能に関する知見を与えるものと考えられる。

現在までの達成度 (段落)

28年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

28年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] Synthesis of dithienogermole-containing Polythiophenes (2017)
  • 著者名/発表者名: J. Ohshita, Y. Adachi, R. Sagisaka, M. Nakashima, Y. Ooyama, Y. Kunugi
  • 雑誌名: Syn. Met. 巻: 227 ページ: 87-92
  • DOI: 10.1016/j.synthmet.2017.03.009
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Synthesis of (Benzofurano)(benzothieno)germole; Chem. Select (2017)
  • 著者名/発表者名: F.-B. Zhang, Y. Ooyama, J. Ohshita
  • 雑誌名: Chem. Select 巻: 2 ページ: 3106-3109
  • DOI: 10.1002/slct.201700597
  • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Studies on Spherically Distributed LUMO and Electron-Accepting Properties of Caged Hexakis(germasesquioxane)s (2017)
  • 著者名/発表者名: J. Ohshita, T. Tsuchida, K. Komaguchi, K. Yamamoto, A. Adachi, Y. Ooyama, Y. Harima, K. Tanaka
  • 雑誌名: Organometallics 巻: 印刷中 ページ: 印刷中
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Synthesis of Dipyridinogermole-Copper Complex as Soluble Phosphorescent Material (2016)
  • 著者名/発表者名: K. Murakami, Y. Ooyama, S. Watase, K. Matsukawa, S. Omagari, T. Nakanishi, Y. Hasegawa, K. Inumaru, J. Ohshita
  • 雑誌名: Chem. Lett. 巻: 45 ページ: 502-504
  • DOI: 10.1246/cl.160036
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Synthesis of silicon- or carbon-bridged polythiophenes and application to organic thin-film transistors (2016)
  • 著者名/発表者名: M. Nakashima, M. Miyazaki, Y. Ooyama, Y. Fujita, S. Murata, Y. Kunugi, J. Ohshita
  • 雑誌名: POLYMER JOURNAL 巻: 48 ページ: 645-651
  • DOI: 10.1038/pj.2015.121
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Synthesis and Properties of Benzofuran-Fused Silole and Germole Derivatives (2016)
  • 著者名/発表者名: F. B. Zhang, Y. Adachi, Y. Ooyama, J. Ohshita
  • 雑誌名: Organometallics 巻: 35 ページ: 2327-2332
  • DOI: 10.1021/acs.organomet.6b00222
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Synthesis of Poly(dithienogermole)s (2016)
  • 著者名/発表者名: M. Nakamura, Y. Ooyama, S. Hayakawa, M. Nishino, J. Ohshita
  • 雑誌名: Organometallics 巻: 35 ページ: 2333-2338
  • DOI: 10.1021/acs.organomet.6b00263
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Group 14 metalloles condensed with heteroaromatic systems (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Ohshita
  • 雑誌名: Org. Photonics Photovolt. 巻: 4 ページ: 52-59
  • DOI: 10.1515/oph-2016-0006
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Singlet oxygen generation sensitized by spiro(dipyridinogermole)(dithienogerrnole)s (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Ohshita, Y. Hayashi, K. Murakami, T. Enoki, Y. Ooyama
  • 雑誌名: Dalton Trans. 巻: 45 ページ: 15679-15683
  • DOI: 10.1039/c6dt02767a
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Preparation of Dithienogermole-containing Polysilsesquioxane Films for Sensing Nitroaromatics (2016)
  • 著者名/発表者名: M. Nakamura, K. Shigeoka, Y. Adachi, Y. Ooyama, S. Watase, J. Ohshita
  • 雑誌名: Chem. Lett. 巻: 46 ページ: 438-441
  • DOI: 10.1246/cl.161119
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [学会発表] ジチエノゲルモール含有シルセスキオキサン膜のセンシング材料への応用 (2016)
  • 著者名/発表者名: 中村優志、大下浄治、重岡健太、大山陽介
  • 学会等名: 第35回無機高分子研究討論会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2016-11-17 – 2016-11-18
• [学会発表] ジチエノゲルモールの芳香族ニトロ化合物センシング材料への応用 (2016)
  • 著者名/発表者名: 重岡健太、大下浄治、大山陽介、中村優志
  • 学会等名: 2016年日本化学会中国四国支部大会
  • 発表場所: 香川
  • 年月日: 2016-11-05 – 2016-11-06
• [学会発表] ケイ素－π電子系の相互作用を利用した新しい元素ブロックの開発 (2016)
  • 著者名/発表者名: 大下浄治
  • 学会等名: 2016年日本化学会中国四国支部大会
  • 発表場所: 高松
  • 年月日: 2016-11-05 – 2016-11-06
  • 招待講演
• [学会発表] Group 14 Element Chemistry for Organic Optoelectronic Materials (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Ohshita
  • 学会等名: 3rd International Fall School of Organic Electronics
  • 発表場所: Moscow(Russia)
  • 年月日: 2016-10-19 – 2016-10-23
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] ポリ（4,4-ジチエノゲルモール）の合成と性質 (2016)
  • 著者名/発表者名: 中村優志、早川慎二郎、西埜誠、大山陽介、大下浄治
  • 学会等名: 第20回ケイ素化学協会シンポジウム
  • 発表場所: 広島
  • 年月日: 2016-10-07 – 2016-10-08
• [学会発表] ポリ（４，４－ジチエノゲルモール）類の合成 (2016)
  • 著者名/発表者名: 中村優志，早川慎二郎，西埜 誠，大山陽介，大下浄治
  • 学会等名: 第65回高分子討論会
  • 発表場所: 横浜
  • 年月日: 2016-09-14 – 2016-09-16
• [学会発表] A new type of silane coupling agent, “disilane-bridged biaryl” (2016)
  • 著者名/発表者名: Takashi Kai, Joji Ohshita, Hidekazu Arase, Yoshihito Kunugi
  • 学会等名: 2016ICFPE
  • 発表場所: Yamagata
  • 年月日: 2016-09-06 – 2016-09-08
  • 国際学会
• [図書] Ge and Sn in Conjugated Organic Materials in "Main Group Strategies towards Functional Organic Materials" (ed F. Jaekle, T. Baumgartner) (2017)
  • 著者名/発表者名: Y. Adachi, J. Ohshita
  • 総ページ数: 20
  • 出版者: John Wiley & Sons Ltd.
• [備考] 広島大学大学院工学研究科応用化学専攻有機材料化学研究室
  • URL: http://home.hiroshima-u.ac.jp/orgmtrls/Ohshita_Group/Ohshita_Group-Home.html