計画研究
本研究では、多彩な元素や元素ブロックを付与したπ共投高分子の創製と卓越した光・電子機能をもつ新素材としての展開を目的として、申請者らが開発し展開中の反応性有機金属高分子の主鎖骨格の組み替えを伴う高分子反応に立脚した検討を行っている。本年度は、主鎖の結合位置が規制された有機チタンポリマーを経由する15 族および14族元素を含ヘテロール骨格をもつπ共投高分子への変換を重点的に検討した。その結果、15族元素であるヒ素、アンチモン、およびビスマスを含むヘテロール部位をもつπ共役高分子が効率よく合成できることが明らかとなり、既に報告を行っているリン元素をもつ系とあわせて光・電子特性を評価した結果、スチボール骨格をもつポリマーが最も低いLUMOエネルギー準位と狭バンドギャップ特性を示すことが明らかになった。なお、アルソール含有π共役高分子については、A01班との共同研究により反応試薬のハンドリングの問題を克服しつつ合成を実現でき、優れた耐酸化性をもつ興味深い特性をもつポリマーであることが明らかとなった。さらに、含ホスホールπ共役高分子のリン元素上の化学修飾による元素ブロック化を行うことでポリマーの光・電子特性をより広い範囲でチューニングできることが示された。また、ゲルモール骨格をもつ高分子への変換を目的にチタナサイクル化合物とゲルマニウムハロゲン化物との反応を種々検討し、反応の高効率化の可能性についてを検討を行った。つぎに、有機チタンポリマーとルテニウム―ハロゲン結合をもつ錯体との反応も行い、含ルテニウムπ共投高分子を得る可能性が示された。また、元素ブロック高分子合成の鍵となる反応性有機金属ポリマーの合成を目的に、パラジウム(0)錯体を低原子価金属錯体として用い、ジイン類との重合を新たに検討し、パラダサイクル構造をもつポリマーが得られることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の研究開始時に計画していた有機チタンポリマーを用いる元素ブロックπ共役高分子の合成について、ほぼ予定どおりに展開を行うとともに、それらのポリマーが元素ブロックに由来する光、電子特性を示すことを系統的に評価することができた。また、当初合成が困難であると想定していたアルソール含有高分子についても共同研究を通して合成を達成することができ、これを通して優れた耐酸化特性などの特徴をあわせて見出すことができた。さらに、遷移金属元素ブロックをもつπ共役高分子の合成についても、上述の有機チタンポリマーを経由する方法を用いて検討し、含ルテニウム高分子への変換の可能性を示すことができた。また、有機チタンポリマーから誘導される含テルル高分子を用いて有機リチウム構造を繰返し単位にもつ高い反応性をもつ高分子を得ることができたが、これらの反応性については平成27年度に勢力的に検討する予定である。また、低原子価金属錯体としてパラジウム(0)錯体を用いるパラダシクロペンタジエン骨格をもつ高分子の合成へと展開することができ、これらの反応性についても平成27年度以降に検討を加える計画である。
平成26年度までの研究結果をもとにこれらをさらに展開し、「主鎖型反応性前駆体高分子の主鎖組み替え」という従来にほとんど例のない合成手法に基づき、従来法では合成が困難であった新規元素ブロック含有π共役高分子の合成を継続して推進する。特に有機チタンポリマーの第13族元素、第14族元素、および第13~15族元素のインターエレメント結合をもつ元素ブロック部位をもつπ共役高分子への変換を継続して検討する。また、これらの変換反応により得られているテルロフェン、スタンノール、チオフェンオキシド部位をもつπ共役高分子を反応性高分子として位置づけ、これらをさらに高分子反応に用いることで、チタナサイクル含有高分子の反応では合成が難しかったより広範な元素ブロック部位をもつπ共役高分子の創製を目指す。さらに、これらの検討を通して得られる元素ブロックπ共役高分子の光・電子特性を明らかにする計画である。つぎに、特異な反応性が見込まれる遷移金属のメタラサイクル部位をもつ有機金属高分子を設計、合成し、それらの元素ブロック高分子への変換の可能性を追求する。すなわち、有機チタンポリマーと種々の遷移金属錯体との高分子反応、および様々な低原子価金属錯体とジイン類の重合をそれぞれ検討し、含メタロールπ共役高分子の合成とそれらの変換反応を検討する。さらに、、これらの合成法に立脚した元素ブロック機能材料の設計、合成を推進し、A03班、A04班との共同研究をもとに有機トランジスタや有機薄膜太陽電池などの応用における優れた光・電子的機能を発現する材料の創製へと発展させる計画である。
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