研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
24102010
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
松川 公洋 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 電子材料研究部, 研究部長 (90416321)
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研究分担者 |
御田村 紘志 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 電子材料研究部, 研究員 (90437054)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 有機無機ハイブリッド / 元素ブロック / 高屈折率 |
研究実績の概要 |
金属酸化物ナノ粒子に対する新規な表面処理剤を用いた有機溶剤分散体の合成を行い、これらとポリマーとの透明ハイブリッドの創製を検討した。これらハイブリッドの階層構造を制御して得られる薄膜やナノファイバーなどの光学特性を評価し、応用展開することを目指した。様々な分散剤を検討したが、ここでは、代表例として、ジカルボン酸無水物(CHA)またはデュアルサイト型シランカップリング剤(CHA-Si)の結果を外略する。これらを用いたビーズミルによりトップダウン法でのジルコニアナノ粒子を作製し、その平均粒径を比較した。解砕時間と平均粒径の関係を調べた結果、いずれの分散剤を使用しても、解砕直後から60 分までは粒径が小さくなった。しかし、CHAの場合、60分以降は粒径が増加し、再凝集が認められた。一方、CHA-Siの場合は60分以降もわずかに粒径が小さくなり、粒径は79 nmまで小さくなることが分かった。その理由として、CHA-Siの方が、CHAに比べて1分子あたりの占有面積が大きく、分散効果に優れていることが推測される。 この分散液を用いて多官能アクリレート(TMPTA)との光架橋型ハイブリッド薄膜を作製し、その屈折率を調べた。薄膜の屈折率はジルコニアナノ粒子の含有量に依存して向上し、1.49から1.61まで制御できることがわかった。 高屈折率のチタニアやジルコニアナノ粒子を分散した高分子ハイブリッドの創製において、粒子表面と結合可能なトリアルコキシシラン基を2つ有する「デュアルサイト型シランカップリング剤」は、キャノピー構造を形成する表面処理剤として効果的であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビーズミル分散に適用可能な分散剤として、デュアルサイト型シランカップリング剤を開発した。これらは、表面処理に新しいコンセプトを与えるものであり、ジルコニアナノ粒子の表面修飾を機能的に行うことができた。また、デュアルサイト型結合形態を有する分散剤として、ジカルボン酸無水物も効果的であることを見出した。これらより生成したジルコニアナノ粒子分散体は、多官能アクリレート、エポキシ樹脂に高分散でき、透明薄膜を得ることができた。高屈折率光架橋薄膜への展開も行い、実用的な見地から重要な実験データが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ジルコニア以外の酸化物ナノ粒子として、チタニアナノ粒子をターゲットとする。リン酸エステルをチタニアナノ粒子の表面処理剤として研究し、特に、メタクリロキシエチルリン酸エステルを用いた場合、メタクリル基によるラジカル重合可能なチタニアナノ粒子が合成可能である。これらは、無機ナノ粒子を有機ポリマー系に導入できる“元素ブロックモノマー”と見なすことができ、それらの光架橋型高屈折率ハイブリッド薄膜への作製を検討する。さらに、ハイブリッド薄膜の加熱による屈折率変化と得られた表面修飾チタニアナノ粒子の光触媒特性など、2次的なプロセスによる物性変化についても探索する。
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