研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
24102011
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
内藤 裕義 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90172254)
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研究分担者 |
永瀬 隆 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00399536)
小林 隆史 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10342784)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 電子デバイス・機器 / 光物性 / 半導体物性 / 誘電体物性 / 解析・評価 |
研究実績の概要 |
元素ブロック高分子が革新的な機能を有することを実証し、元素ブロック高分子の効率的な材料開発手法を確立する研究領域の創成を目的とする。 本年度は、有機発光素子(OLED)では、陰極に金属酸化物を有する逆構造OLEDの素子特性の向上、さらに、金属酸化物から元素ブロック高分子への電子注入メカニズムを明らかにした。Al添加ZnO (AZO)/Polyethyleneimine (PEI)/Poly(9,9-dioctylfluorene-alt-benzothiadiazole) (F8BT)/poly(9,9-dioctylfluorene-alt-N-(4-butylphenyl)-diphenylamine)/MoO_3/Al構造の素子で輝度22000Cd/m^2を達成した。AZO/PEI/F8BTにおけるAZOからF8BTへの電子注入メカニズムは、PEI/F8BT界面に正孔が蓄積することにより、この界面に極めて高い電界が印加され、Fowler Nordheimトンネリングに由来することを明らかにした。 有機電界トランジスタは、有機半導体として2,7-didodecyl[1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene (C12-BTBT) をトルエンとパラキシレンの混合溶媒に溶解させ、塗布することにより電界効果移動度 10 cm^2/Vsを達成した。 有機薄膜太陽電池(OPV)は、A01班 大下教授合成による元素ブロック高分子によりOPVと作製し、その特性を評価した。さらにOPVの最適膜厚を決定付ける物性、OPVの開放起電力減衰から求められる物理量を明らかにした。 物性評価法としてインピーダンス分光法により、電荷寿命を評価できることを示し、同分光法により、電荷輸送特性(移動度、トラップ、寿命)を全て明らかにできるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機発光素子(OLED)では、陰極に金属酸化物を有する逆構造OLED(iOLED)の素子特性の向上、さらに、金属酸化物から元素ブロック高分子への電子注入メカニズムを明らかにすることができた。電子注入メカニズムを明らかにしたことでデバイスシミュレーションが可能となり、デバイスの最適構造を試行錯誤的な実験を行わずにできるようになった。 有機電界トランジスタでは、塗布型、多結晶有機半導体薄膜としては世界最高値である電界効果移動度 10 cm^2/Vsを達成した。この値は、当初の数値目標に設定した値で、これを達成できたことにより有機半導体の可能性を示せた。この値は、IGZOとして知られる酸化物半導体、InGaZnOと同レベルの値であり、液晶やOLEDディスプレイのバックプレーンへの応用が期待できる水準である。 有機薄膜太陽電池(OPV)は、A01班 大下教授合成によるケイ素架橋によるD-A型高分子によりOPVを作製、特性評価を行い、その成果を論文により発表することができた。この他、「ユーロピウム錯体の光物性」、「グラフェンナノシートの光物性」に関する共同研究の論文発表に寄与することができた。また、OPVの開放起電力減衰に明快な物理的な解釈を与えた。 有機半導体の電子輸送特性を評価する手法は、有機半導体が絶縁性半導体であるため有効な方法がなかった。研究代表者はインピーダンス分光法によりすでに移動度、トラップを評価する手法を確立していたが、これらの物理量に加え、電荷寿命を評価する方法を提案することができた。これにより、電荷輸送特性をすべて評価できる手法を確立することができた。電荷寿命測定法の提案とともにインピーダンス分光法による移動度、トラップ、電荷寿命評価に関する解説論文も発表した。 以上の理由からおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の専門である有機デバイス(有機発光ダイオード、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池)作製プロセスの構築、これら有機デバイスのデバイスシミュレーションを一層充実、深化させるとともに、A01~A04班の合成研究者との連携を密接にし、元素ブロック高分子材料の光物性、電子物性評価を積極的に行う。 現在進行中の共同研究として、「ケイ素架橋によるD-A型高分子の電子状態制御と薄膜太陽電池への応用」、「ZrOナノ粒子分散ポリマーゲート絶縁膜の評価」、「ユーロピウム錯体を発光に添加したiOLEDの開発」、「元素ブロック材料を用いた有機電子デバイスの開発」、「有機As化合物の光物性」、「グラフェンナノシートの光物性」がある。すでに3つの共同研究に関しては、投稿論文が受理されている。最終年度であることを常に意識し、共同研究成果の発表に傾注する。
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