研究領域 | 重力波天体の多様な観測による宇宙物理学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
24103006
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 貴浩 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (40281117)
|
研究分担者 |
中村 卓史 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80155837)
山田 章一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80251403)
井岡 邦仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80402759)
瀬戸 直樹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80462191)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 宇宙物理学 / 重力波 / 超新星 / 中性子星 / ブラックホール / 修正重力 |
研究概要 |
1)様々な重力波源の探査と重力波波形の解明(中村)2)超新星を中心とした物理(山田)3)新しい重力波観測・データ解析法の提案(瀬戸)4)その他の観測手段との同時観測から得られる物理(井岡)5)相対論の検証、及び、宇宙論的観点からの重力波研究(田中)について()内の代表者・分担者を中心にポスドクを雇用しプロジェクト的に取り組んだ。 1)に関しては、重力波源として有力視されているショートガンマ線バースト(SGRB)についてスペクトルのピークエネルギーと最高光度に関係式がある事を発見した。これを用いると赤方偏移の決まっていないBATSEの900イベント程度の大量のSGRBの赤方偏移が決まり、重力波のイベントレートの予想が可能になることが分かった。2)に関しては、重力崩壊型超新星爆発において、磁気回転機構計算で見られたジェットの形成は高分解能計算では生じなくなること、爆発は磁気回転不安定性により増幅した磁場のストレスにより起こるのではなく、磁場で輸送された角運動量により増幅されたニュートリノ加熱により起こる可能性を初めて指摘した。3)に関しては、楕円軌道を持つコンパクト連星を研究した。まず、古在機構による進化過程を直接3体計算で調べ、従来の軌道平均法と大きく異なる結果を得た。また、電磁波対応天体同定において楕円連星重力波探査の利点を示した。4)に関しては、最近発見された電波バーストに対する連星白色矮星合体モデルを提唱した。また、連星中性子星残骸からからの高エネルギー放射を計算や、暗いガンマ線バーストからのTeV-PeVニュートリノを議論した。加えて、ブラックホール・中性子性合体からの質量放出が非等方的であることを示した。5)に関しては、双重力理論において重力波振動が起こることを発見した。また、双重力理論を自然に再現する高次元宇宙モデルが構成できないかを調べた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、代表者、分担者による業績として、上に報告したような顕著な研究成果を2年目にして挙げることができた。重力波源となる現象のイベントレートの予測精度の向上は、今後の同時観測計画に影響を与えるとともに、発見された際にイベントレートとモデルの比較から背景にある物理に迫ることができる重要な成果である。また、連星合体における重力波放出にともない、どのような電磁放射が存在しえるかについても、これまで提案されていたマクロ新星にとどまらず、ジェットの形成に付随するような新たな放射機構なども提案された。また、ニュートリノ振動のような現象が重力波の伝播に関しても起こるなら大変な驚きであるが、これまで矛盾のない理論モデルが提案されていなかった。我々は、そのようなモデルも構成可能であることを示すことに成功した点も画期的であると言えると考える。上記の研究実績には書ききれなかったが、金属汚染される以前に形成された初代星連星の進化を考えることで、ブラックホール連星が十分な頻度で見つかる可能性を指摘するなどの成果も挙がっている。 このような研究の成果に加えて、ほぼ、毎週のデータ解析グループと共同でのゼミを続けており、若手を中心とした研究者の層が増している。2月には合宿形式の勉強会を開き、A04データ解析グループとの共同研究をさらに進めるための議論を深めた。実際、これまでにも新学術領域内で、超新星に関連してA03とA04と連携した共同研究が進められていたり、重力波振動に関連してA04との共同研究を進めるなどの、領域としての連携を活かした成果も挙がりつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進の方針としては、これまで以上に領域内の他の計画研究との連携を推進するような研究会などの企画を計画する。具体的には領域全体での隔月の研究会に加えて、合宿形式の研究会のなかに他の計画研究との連携を取り込み、新しい共同研究を提案していく。また、研究の裾野を広げるために国際的スクールを開催する。このスクールの開催には基礎物理学研究所のプログラムを利用することを考えている。 以上に加えて、これまで通り、毎週のテレビ会議によるゼミ、JGRG国際ワークショップへの共催などを通じて、計画研究内外の連携をとりつつ、1)様々な重力波源の探査と重力波波形の解明 2)超新星を中心とした物理 3)新しい重力波観測・データ解析法の提案 4)その他の観測手段との同時観測から得られる物理 5)相対論の検証、及び、宇宙論的観点からの重力波研究の5つの重点領域にプロジェクト的に取り組む。
|