研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
24104002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 博英 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (20423014)
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研究分担者 |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20511249)
鈴木 泰博 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (50292983)
遠藤 政幸 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 准教授 (70335389)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 分子ロボティクス / リポソーム / DNAナノ構造体 / RNA / 自律性 / 人工細胞モデル / 人工レセプター / 少数分子化学反応 |
研究実績の概要 |
研究代表者の齊藤らは,本年度,標的乳がん細胞を選択的に認識・検出する機能性RNPナノ構造体を創製した.さらに,分担者の遠藤と共同研究を行い,高速原子間力顕微鏡を用いて,機能性RNPナノ構造体を高解像度で観察することに成功した.今回創製したRNA-Protein (RNP)ナノ構造体は,細胞表面上で発現しているレセプターを選択的に認識できるため,標的細胞への人工RNAデリバリーを可能とすると期待できる. 分担者の遠藤は,本年度,分子ロボットのセンサーとなる人工レセプター構造体を構築し,2つのドメイン間にセンサー部位を導入し,特異的なDNA鎖に対して構造変化を誘導することに成功した.また,分子ロボット内部で働く,制御可能な転写系の構築を行い,低濃度のシグナルを増幅し転写を活性化できる系の構築に成功した.脂質膜とDNA構造体の相互作用では,脂質膜上でのDNA構造体の動的なアセンブリーの様子を高速AFMによって可視化に成功した. 分担者の瀧ノ上は,遠心型マイクロ液滴生成デバイスによる,細胞サイズ油中水滴リアクタ,細胞サイズリポソーム,およびマイクロゲルファイバーの作製に成功した.これらは人工細胞型分子ロボットのボディとして,センサーを配置するために利用される.また,作製したリポソーム内でのRNA転写反応や,DNAマイクロゲルの生成とそれによるリポソーム膜の制御に関しても研究を発展させた. 分担者の鈴木は,分子ロボットのためのノイズリダクション反応系について,Hopfield, Alonらによる遺伝子の動的校正の観点から,分子計算系におけるリーク(ノイズ分子による反応系の誤動作)について検討を行い,少数分子系の場合には受容体分子と結合した複合体を一定の割合除去することによりノイズを除去することができることを示した.また少数分子系が特異的な振る舞いをみせる境界を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のように計画に沿って進展できている.齊藤は,RNPナノ構造体の入力環境に応じた機能構造制御と,それを活用した細胞応用技術を確立した.遠藤は,分子ロボットのセンサーとなる人工レセプター構造体の構造変化の操作を行え,脂質膜上でのDNAオリガミ構造体の動的なアセンブリーを高速AFMによって可視化できた.また,瀧ノ上は,細胞サイズ分子ロボットのための基礎技術の開発が進んだ.鈴木は,分子反応が少数性により特異は振る舞いをみせる機序を明らかにしし,複数のノイズリダクションを行う化学反応系を提案した.
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今後の研究の推進方策 |
代表者の齊藤は,RNAスイッチ技術,RNAナノ構造体構築技術をベースとし,これらRNAデバイスを分子ロボット感覚機能に実装する研究を進める.また,作製した分子ロボットの具体的応用として,再生医療分野等の医療応用に貢献できる,哺乳類細胞内で機能するRNA型分子ロボットプロトタイプの設計と構築を進める.分担者の遠藤は,センシング部位を導入した人工レセプターを脂質2重膜(ベシクル)に貫通させて導入し,その応答性と機能を検討する.ベシクル内での制御可能な転写・翻訳系の構築を行う.分担者の瀧ノ上は,構築した光刺激を感知して分子情報に変換するデバイスを利用し,光に応答して構造変形するリポソームベースのマイクロカプセル型分子ロボットの構築に挑戦する.また,DNAゲルによりリポソーム膜を制御する技術開発も進める.さらに非対称複雑形状マイクロゲル粒子をベースにした自律運動分子ロボットに,走化性・走光性などのセンサー機能を搭載するメカニズムの設計と実験を検討する.分担者の鈴木は,理論的な立場で確率的な揺らぎをもちいたシグナル-ノイズ比の評価を行う.そのための基礎データを得るための実験が必要である.また,提案している反応系を分子ロボットの知能を結びつけ,知的なノイズリダクションを可能とする.
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