研究領域 | 実験と観測で解き明かす中性子星の核物質 |
研究課題/領域番号 |
24105003
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田村 裕和 東北大学, 理学研究科, 教授 (10192642)
|
研究分担者 |
阪口 篤志 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (70205730)
應田 治彦 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 研究員 (60221818)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 実験核物理 / ストレンジネス / ハイパー核 / ハイペロン核子相互作用 / K中間子原子核 / 中性子過剰Λハイパー核 / ハイパー核γ線分光 / J-PARC |
研究実績の概要 |
中性子過剰核物質中でのハイペロンとK中間子の相互作用を調べるため、以下の研究を進めた。 (1)ΣN散乱実験(E40)の準備。開発に成功した円筒型多層ファイバー飛跡検出器CFTとBGOカロリメーターからなる散乱陽子検出器系について、実機の製作を進めた。さらに、高計数率によるパイルアップが予想されるBGO検出器について波形読出しシステムの開発を進めた。 (2a)H25年度のJ-PARC事故により延期となっていた Λハイパー核精密γ分光実験(E13)の第1段階(E13-1:4ΛHe,19ΛFハイパー核のγ線測定)の準備をJ-PARC K1.8ラインにて進めた。またE13-2に備えてγ線検出器群Hyperball-JのGe検出器波形読み出し回路の開発を進め、アルゴンヌ研究所製のデジタル波形処理回路に接続する前段部分の独自回路を開発した。 (2b)実施済の6Li(π-,K+)反応による中性子過剰Λハイパー核6ΛHの生成実験(E10-1)の詳細なデータ解析と理論解析を進めた。データ解析では6Li(π-,K+)反応スペクトルをΛ、Σ生成を含む広い質量領域で正確に求めた。理論解析では、2重荷電交換反応によるΛハイパー核生成、Σハイペロン準自由生成、非束縛状態のΛハイペロン生成を統一的に扱う枠組みを用いた解析を世界に先駆けて行った。結果は国内外の学会等で報告した。 (3)3He(K-,n)反応によるK-pp核の探索実験(E15)の初期的データの解析を行った。高統計・高S/N比のinclusiveスペクトルを得たが、その深い束縛エネルギー領域にはK-pp核の幅の狭い束縛状態に対応するピークは見いだされなかった。一方でΛpn終状態を選択した場合、統計は乏しいが運動量移行の小さな事象に対し、K-ppの閾値の近辺に興味深い構造が見られた。結果は国内外の学会で報告を行い、一部のデータは論文誌に投稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ΣN散乱実験(E40)の準備は順調に進んだ。また、(2b)6ΛHの生成実験(E10-1)のデータ解析と理論解析も順調に進んだ。 また、H25年度のJ-PARC事故により延期となっていた(2a)Λハイパー核精密γ分光実験と(3)3He(K-,n)反応を用いたK-pp核の探索実験については、J-PARC施設の改修に時間がかかったためH26年度内の実験再開は出来なかった。しかし、事故前にとっていたデータの解析が進展し、成果発表も行った。さらに今後に向けた検出器等の改良も進めることができた。このように、J-PARC事故の影響は最小限に留めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)ΣN散乱実験(E40)の検出器が完成する予定なので、性能検査を徹底して行い、本番の実験に備えることが重要である。 (2b)6ΛHの生成実験(E10-1)の新たな解析結果を論文で発表する。さらに9ΛHeの生成実験(E10-2)の準備も進める。 H27年度のはじめにJ-PARCハドロン施設のビームが再開する予定なので、(2a)Λハイパー核精密γ分光実験と(3)3He(K-,n)反応を用いたK-pp核の探索実験のデータを収集して、解析し、結果を発表することが重要である。また、これらのデータを理論班のメンバーとともに分析して、中性子星内部のハイペロンやK中間子の相互作用について理解を深めることにも力を傾けるつもりである。
|