計画研究
主にアメリカDOE予算を使ってミシガン州立大学のチームと共同製作を進めてきた大型の多重粒子飛跡検出器TPCの搬入が平成25年度終わりに無事終了したので、平成26年度は検出器からの信号を読み出す高集積度回路GETの前段ボードAsAdの取り付け作業を進めた。まず取り付けに必要な放電防止付の接続コネクターでの発生ノイズの低減化を図り、最終版のコネクターの量産を行った。AsAdへの電力供給用そしてデーター転送用の非磁性ケーブルを選定し、ボードの取り付け治具の製作を行い、秋口からは最終的に必要な回路の約半数をTPCに取り付け、宇宙線を使った信号テストを開始した。GETシステムの総合性能についてもフランス人開発グループとともに6月初めに実測を行い、ほぼ設計通りの速度で動作することを確認した。また夏の加速器のシャットダウン期間を利用して、GET実装前のTPC本体だけではあるが、大型超伝導電磁石の磁極間への挿入テストを行い、必要機材や作業手順を確認し、無事約1時間のうちに挿入することに成功した。TPCを動作させるのに必要なゲーティンググリッドの駆動回路、そして回路に開始信号を供給するトリガー検出器のプロトタイプの製作を進め、それらの性能評価をするテスト実験を放射線医学研究所HIMACを使って行い、実機の設計に必要な基礎情報を得ることが出来た。昨年度理研RIBFで実施した低密度陽子過剰核物質の状態方程式を探るアイソスピン拡散過程を調べる実験のデータ解析も更に伸展し、予備的な解析結果についてARIS国際会議のポスターセッションで発表を行った。ただ、当初想定していたより測定粒子の荷電分布に広がりがあることが分かったため、粒子識別をやり直すことになる。
2: おおむね順調に進展している
昨年度までの経験を活かし、時間のかかる物品の調達をなるべく前倒しで行うようにした結果、6月後半から2か月の間にTPCのSAMURAI電磁石内への挿入作業のテストをスムーズに行いことが出来た。一方、今年度の当初予算は夏過ぎまでに執行がほぼ終わってしまったので、平成27年度予算の3分1を前倒し申請することにした。そうすることによって、加速器を使った実験の準備、特にまだ必要な台数が確保できていなかった、中段の回路ボードCoBoの買い増し、がより早期に完了すると目論んでいたが、残念なことに既に必要台数の調達が完了していたAsAdボードに手直しが必要な重大な欠陥が見つかってしまった。これに対処するのに想定していなかった時間がかかることが判明し、スピードアップ、スピードダウンが相殺してしまい、全体としての進み具合はおおむね順調と言えるレベルにまでもどってしまった。しかし、中間評価で好結果を得ることが出来たので、追加で配分された予算を使って、データ収集系のコンピュータを当初の全体計画より約半年早く調達することが出来きた。本格的な実験データ収集を前にデータ解析に必要なソフトウェア開発をこのコンピュータシステム上で進められる目途がたったので、今後は研究計画のスピードアップを図ることが期待される。また平成26年度から中国、ポーランドの研究者からの新たな国際協力が得られるようになったので、トリガー検出器の開発に関してもかなりの進展が得られた。
加速器を使った実験を行う際には絶対に必要となるデータ読み出し用回路GETについてはほぼ必要なチャネル数の調達が終わったが、これまでに調達済みの回路の性能テストを繰り返した結果、検出器からの正極性の信号を処理する時、AsAdボードの増幅度が想定していたより不均一になるという欠陥があることが明らかになった。フランスの共同研究者とともに何がその原因で、どういう手直しが必要か検討してきたが、幸いなことに比較的簡単に対処できることが分かったので、新年度早々にフランスの業者にボードを送り返すことにしている。このボードの修理を含めて、加速器を使った本実験の準備作業を8月初めぐらいまでに完了して、平成27年度秋から、既に総計で13.5日の実施が認められている「高密度中性子過剰核物質の状態方程式」を探る加速器を使った実験を開始することを目指す。現実には同じSAMURAI電磁石の利用を予定している他の実験グループとマシンタイムの取り合いになると思われるので、誰の目から見ても実験の遂行に不安を感じさせない出来るだけ完成度の高い実験セットアップの構築を早期に実現するようにしたいと思っている。また平成26年度から活発化した計画研究理論班との議論を更に進め、TPCで得られる実験結果を迅速に理論的に考察できる体制づくりも進める。
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