研究領域 | 実験と観測で解き明かす中性子星の核物質 |
研究課題/領域番号 |
24105005
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 隆司 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (50272456)
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研究分担者 |
下浦 享 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10170995)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 中性子星 / 不安定核 / 中性子スキン / 核物質の状態方程式 / 中性子ハロー / ダイニュートロン相関 / 非束縛核 / 少数核子系 |
研究実績の概要 |
本計画研究では、不安定核ビームを用いた中性子過剰核の直接反応による実験により、標準核密度ないし低密度の中性子過剰な核物質の性質を調べ、中性子星の構造を解明することを目指している。具体的には①中性子スキン核の核応答の研究、②希薄核密度物質中でのダイニュートロン相関の研究、③中性子数が非常に過剰な非束縛原子核の探索、という3課題に取り組んでいる。 H25年度およびH26年度(H25年度の繰り越し分)については以下のような成果を得ている。 ①については、中性子過剰カルシウム同位体48,50,52Caのクーロン励起実験によるピグミー共鳴の観測を目指しているが、その研究計画をH25年12月の理化学研究所のプログラム委員会に提出し、高評価で採択された。一方、この実験計画に際しては当新学術領域の理論班(D班)による理論計算を活用した。関連して、H26年2月には関連してミニワークショップ「原子核E1応答と核物質の状態方程式」を開催した。 また、クーロン励起の実験に向けてガンマ線検出器CATANAの建設を進めている。今年度はプロトタイプ検出器を用いて得た基礎データをもとにして、量産する検出器に用いる光検出器の選定と検出器のデザインの改良を行った。 ②については、H24年度に行った2中性子ハロー核22C,19Bのクーロン分解反応の解析を引き続き行った。関連して、中性子ハロー核については変形駆動型p波ハローの構造を、中性子過剰核31Neに発見し、さらに同様のハロー構造を37Mgにも発見した。これらの成果を2篇の論文にまとめ、Physical Review Letters誌で発表し、それぞれ、プレスリリースも行った。 ③についてはH24年度に行った非束縛核25,26Oの探索実験の解析を引き続き進め、観測した準位のエネルギー幅やその誤差評価を行った。さらに、プレリミナリーな解析結果について、国際学会等で招待講演を行った。テトラ中性子の探索に向けた、次世代型中性子検出器の開発も引き続き進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、中性子過剰な核物質の性質を探り、中性子星の構造に制限を与えるための研究を行っている。具体的には、①中性子スキン核の核応答の研究、②希薄核密度物質中でのダイニュートロン相関の研究、③中性子数が非常に過剰な非束縛原子核の探索、という3課題に取り組んでいる。 ①については48Ca,50Ca,52Caを用いたクーロン励起の実験計画を具体的に策定し、理研のプログラム委員会で高評価を得た。さらに、ワークショップ「原子核のE1応答と核物質の状態方程式」を東工大で開催し、実験のデータ解析などで他のグループとの共同研究を開始させるなどのきっかけを作った。一方、クーロン励起の実験で用いるガンマ線カロリメータの建設を進めている。H25年度にはプロトタイプ検出器を用いたデータの取得を行い、シンチレータ結晶の選定を行った。H26年度(繰り越し分)では光検出器の選定を行った。また光検出器のための高電圧印加装置も整備された。検出器の選定に時間を要したため、予定よりやや遅れているものの、購入手続きの最終段階まで来ている。 ②③については、非束縛原子核とその準位を25O,26O,18B,21Cに新たに発見した。また新種の中性子ハロー核31Ne,37Mgの発見を行い、プレスリリースも行った。以上のように、当初予定した計画以上に順調に進んでいる。 ①がやや遅れているものの、②③では予定以上に進展しているので、全体としてはおおむね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で進めている①中性子スキン核の核応答の研究、②希薄核密度物質中でのダイニュートロン相関の研究、③中性子数が非常に過剰な非束縛原子核の探索、という3課題について今後の研究の推進方策を述べる。 ①理研のRIビームファクトリーにおいて中性子スキン核の候補50Ca,52Caおよび参照核48Caのクーロン励起の本実験をH28年度中に行うことを計画している。この実験に必要なガンマ線検出器CATANAの建設を進めており、H26年度中に最終仕様を決定し、H27年度には建設を終了させる。 ②22C,19Bのクーロン分解反応実験、③25O,26Oの探索実験はすでに終えており、そのオフライン解析を進めている。25O,26Oの探索実験の解析はほぼ終了しており、H27年度には有力国際誌での出版を目指す。理論班(D班)と協力して理論的解釈を行う可能性も探る。 テトラ中性子系の実験に向けて、引き続き次世代型中性子検出器の開発を進める。また、組み換え反応によるテトラ中性子系の実験結果が出ており、これを論文にまとめる。 ③で最も重要な課題の一つが28Oの探索実験である。この実験については理研RIBFのプログラム委員会で最高評価Sを得ている。H27年度中に実験を行う予定である。
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