計画研究
本研究は、不安定核ビームを用いた中性子過剰核の直接反応により、標準核密度から低密度に至る中性子過剰核物質の物理的性質を調べ、中性子星の構造の解明を目指している。具体的には①中性子スキン核の核応答の研究、②希薄核密度物質中でのダイニュートロン相関の研究、③中性子数が非常に過剰な非束縛原子核の探索、という3課題に取り組んでいる。H26年度およびH27年度(H26年度の繰り越し分)については以下の成果を得ている。①中性子過剰カルシウム同位体48,50,52Caのクーロン励起実験によるピグミー共鳴の観測をめざし、その実験の主要検出器の一つとなるガンマ線検出器アレー(CATANA)の建設を進めている。H27年度には、H26年度の繰り越し予算を利用して、前年度に決定したガンマ線検出器アレーのデザインに基づき全体の約半分を構成するCsI(Na)シンチレータを量産した。またCsI(Na)に取りつける光検出器とその高電圧印加装置の整備を行った。これらの検出器の性能テストを行い、ここで製作したほぼ全ての結晶が本研究で要求される性能を満たしていることを確認した。②2中性子ハロー核22C,19Bのクーロン分解反応の解析を引き続き行った。並行して変形ハロー核の候補となっている29Neのクーロン分解・核力分解反応の解析を進めた。③非束縛核25,26Oの探索実験の解析を引き続き進め、国際会議でプレリミナリーな結果について報告を行った。非束縛核27,28Oの探索実験に向け、ドイツGSIで開発された中性子検出器アレーNeuLANDを理化学研究所に輸送し設置した。一方、二重荷電交換反応4He(8He,8Be)を用いた4中性子系(テトラ中性子)探査実験の解析が完了し、学位論文となった。次世代中性子検出器開発はプロトタイプの仕様が決まり、その製作および具体的な読出しシステムを検討した。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、中性子数が過剰な核物質の物理的性質を探り、中性子星の構造に制限を与えることを目的としている。具体的には①中性子スキン核の核応答の研究、②希薄核密度物質中でのダイニュートロン相関の研究、③中性子数が非常に過剰な非束縛原子核の探索、の3課題に取り組んでいる。①については、中性子スキン核である48,50,52Caのピグミー共鳴測定実験のため、ガンマ線検出器アレー(CATANA)の建設を進めている。シンチレータからの光を読み出す光電子増倍管とその高電圧印加装置を整備し、さらにCsI(Na)シンチレータ結晶を48個量産した。シンチレータと光電子増倍管を組み合わせ、48個全ての性能測定を行い、ほぼすべての結晶が本研究で要求される性能(662 keVのガンマ線の対するエネルギー分解能(FWHM)<9.5%)であることが確認できた。②については、29Neが変形ハロー核であることを示す前駆的証拠を得た。③については、非束縛核25O,26O,18B,21Cの解析を進め、質量、エネルギー準位の最終値が得られた。さらにテトラ中性子系の共鳴準位に相当すると考えられるピークをを初めて観測するなど、計画以上の進展がみられる。①②は研究がほぼ順調に進んでおり、③では計画以上に研究が進んでいることから、全体としてはおおむね順調に進んでいる、とした。
①についてはγ線カロリメータ(CATANA)に用いられるCsI結晶の購入を終え、テストの後インストールの準備に入る。②中性子ハロー核22C, 19Bのクーロン分解反応実験のデータ解析を引き続き進める。29Neの分解反応実験のデータ解析を完結させ、結果を論文としてまとめる。③25O,26O, テトラ中性子のデータ解析を完結させ、結果を論文としてまとめる。28O実験の準備を進め、H27年度中に実験を行う。
すべて 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 9件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 12件、 招待講演 10件) 備考 (2件)
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