研究実績の概要 |
本研究では中性子星の構造を解明するため、不安定核ビームを用いた実験によって、中性子が過剰な核物質の状態方程式を決定し、超流動状態などの中性子星物質の物性の解明を目的としている。そのため1)中性子スキン核の核応答、2)希薄核物質中のダイニュートロン相関、および3)非束縛状態にある中性子超過剰核を生成・観測する。以上の3テーマを行い、本研究の目的を達成させる。 H28年度は、以下の実施計画を立てた。すなわち、i)γ線カロリメータ―を完成させ、性能評価実験を行う。さらに不安定核ブームを用いて、中性子過剰Ca同位体の電気双極子応答の実験を行う(上記1)。 ii)中性子ハロー核のクーロン分解反応実験の解析を行いダイニュートロン相関を系統的に調べる(上記2)。iii)前年度に論文発表したテトラ中性子について、統計量を大幅に向上させた実験を実施する(上記3)。iv)前年度に論文発表した酸素26(26O)の実験結果をもとに今後の研究の展開を探る(上記3)。v)前年度に行った酸素27,28(27,28O)の生成実験のデータ解析を進める(上記3)。 i)については、γ線カロリメータ―を完成させ、宇宙線とγ線源を用いた性能評価実験を行った。さらに、理研での不安定核ビーム実験に導入し、不安定核の励起準位からのγ線観測に成功した。中性子過剰Ca同位体の実験は理研のビームタイムスケジュールの関係から年度内に実施できなかったが、最終的に平成29年4月に本実験を行いデータの取得に成功した。ii)クーロン分解反応実験のデータ解析を進めた。iii)テトラ中性子の生成実験を行い、成功させた。現在、詳細解析中である。iv)理研RIBFのプログラム委員会に、2中性子崩壊の実験を提案し、高評価で採択された。v)データ解析から27O事象の兆候をつかむことに成功した。引き続き27,28Oの詳細解析を進めている。
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