研究領域 | 多面的アプローチの統合による計算限界の解明 |
研究課題/領域番号 |
24106005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 直樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40145826)
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研究分担者 |
岩田 覚 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00263161)
岡本 吉央 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (00402660)
神山 直之 九州大学, ス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (10548134)
来嶋 秀治 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (70452307)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 最適化理論 / 計算限界分析 / 劣モジュラー最適化 / 乱択アルゴリズム / 固定パラメータアルゴリズム / 拡張定式化 |
研究実績の概要 |
グラフの向き付けに関する研究を通じて,連結デタッチメントの高速化を行った.また,劣モジュラ関数や双劣モジュラ関数の一般化であるk劣モジュラ関数の最大化に関する論文を執筆した.またグラフ的TSPの近似比の改善を狙って新たなアプローチを提案した. 計算複雑性が未解決である,木における最小費用b辺支配集合問題の計算限界解明に取り組んだ.特に,近似可能性と固定パラメータ容易性に関して,既存の研究を大幅に改善する結果を得た.また,木の特殊ケースであるパスにおける同問題に対して,既存研究では線形計画法に基づく多項式時間アルゴリズムしか知られていなかったが,動的計画法に基づく新しい組合せ的多項式時間アルゴリズムの設計に成功した. 動的フロー問題における最適施設配置問題に対して,施設数kを定数とした場合,多項式近似アルゴリズムを開発した.またkをパラメータ化した場合,w[1]-困難の結果を得た. #P困難性が知られるナップサック多面体の体積計算に対する決定性の多項式時間近似アルゴリズムを与えた.提案アルゴリズムでは畳み込み計算の近似を用いており,アルゴリズム解析に対する新しい技法を構築した.この他,ハミルトン閉路やスケジューリング,相互作用計算などの計算量の解明に成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体的な理由としては,多くの論文出版および研究発表を行っていること,そしてミニワークショップ,国際ワークショップを定期的に開催し,他班とも連携を取りながら,研究を推進していることが挙げられる.さらに具体的な結果としては,以下のようなものが挙げられる. 班全体で進めたマトロイドの拡張定式化に関する研究が海外の研究者にも注目され,後続研究が発表されている. 基本的なグラフ上の最適化問題の一つであるがその計算複雑性が解明されていない木における最小費用b辺支配集合問題に対する部分的な成果を得られた. #P困難な問題に対しては多くの乱択近似計算法が設計されているのに対して,決定性の近似アルゴリズムの設計は,計算量理論分野の近年の重要な課題の一つである.P vs BPP問題へのアプローチとして,#P困難な問題に対する決定性の近似アルゴリズムの解析技法に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
組合せ最適化問題の拡張定式化を通じてP≠NP問題に迫るアプローチをさらに探求する.指数関数サイズの拡張定式化を持つマトロイド多面体の発見,離散構造上の演算に関する拡張定式化サイズの依存性の解明,錐計画問題を用いた拡張定式化サイズに対する下界証明技法の開発を推進する.今年度も引き続き,論理式サイズの下界の証明に対する数理計画法を用いたアプローチの研究を行う. 指数時間厳密アルゴリズムに対する計算限界解析の研究を推進する.特に,指数時間厳密アルゴリズムに対する計算限界解明手法を援用して,多面体的アプローチによる新たな計算限界解明手法を創出する.特に,A01班,B02班と連携して,多面体的アプローチと数理論理学的アプローチの接点を見出し,それらの融合を図る. 昨年度までの研究により,マトロイドの最大共通基問題と最大重み共通基問題に対する計算時間の差に関する知見を得ることができたため,本年度はこの成果の論文誌への投稿を目指す. 劣モジュラ最適化問題の中で,定数近似解法が与えられている問題と,より高いオーダーの情報理論的下界が与えられている問題とに分類する.特に,前者の問題群に対して設計手法に共通した性質を計算上界の観点から探る.さらに,劣モジュラ最適化における既存の定数近似アルゴリズムを,劣モジュラ関数の一般化である双劣モジュラ関数により記述される枠組に拡張する. P=BPP問題に関して,平成26年度はC01班と連携して#P困難性の知られるナップサック多面体の体積計算に対する決定性の近似アルゴリズムを与えた.平成27年度は,この成果のより一般的な多面体の体積計算への拡張に取り組む.また,C03班と連携して,置換多面体の構造に着目したオンライン学習のリグレット解析を行い,計算下界の解明にアプローチする.
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