研究領域 | 多面的アプローチの統合による計算限界の解明 |
研究課題/領域番号 |
24106010
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
瀧本 英二 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (50236395)
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研究分担者 |
篠原 歩 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00226151)
正代 隆義 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (50226304)
畑埜 晃平 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (60404026)
内沢 啓 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (90510248)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 計算学習理論 / しきい値回路 / オンライン予測 / 近似アルゴリズム / 連続緩和 |
研究概要 |
1.仮説表現の複雑さに関する成果 (1) 対称ブール関数を計算するしきい値回路について,その回路を構成する素子のファンインと発火量の間にトレードオフがあることを示した.(2) 脳の視覚情報処理に係る関数を計算するしきい値回路について,回路サイズと発火量の間にトレードオフがあることを示した. 2.学習の複雑さ指標の解析に関する成果 (1) 木縮約パターンとは,辺縮約に基づき無順序木を生成するグラフ文法である.与えられた無順序木構造データにマッチする極小汎化木縮約パターンを発見する問題が,NP困難であることを示した.(2) 決定性有限オートマトンの最小無矛盾問題に対し,入力を接頭辞集合に限定したとしてもNP困難であり,近似も困難であることを証明した. 3.アルゴリズムの設計と解析手法の体系化に関する成果 (1) 被覆集合族などの離散構造のクラスについて,そのクラスに対する線形最適化問題が緩和に基づく近似アルゴリズムを持つとき,その近似アルゴリズムをリグレットの小さいオンライン予測アルゴリズムに変換する一般的な手法を与えた.この結果には,計算に対する新しい理解という観点で,次の2つの大きな貢献がある.1つめは,リグレット解析において重要な役割を果たすメタラウンディンの概念が,緩和による近似問題の双対問題であることを見出したことである.2つめは,その双対構造とブースティングによるマージン最大化問題に現れる双対構造の類似性から,ブースティングの手法を用いてメタラウンディングを実現する多項式時間アルゴリズムを与えたことである.(2) 質問学習モデルにおいて多項式時間学習可能ないくつかの形式言語の族が,統計学習モデルにおいても正例のみから学習可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実施計画として掲げている3つの項目について,それぞれ評価が高く,今後の展開につながるような成果を数多く上げている.例えば,研究実績の概要 2-(1) の結果は,ラベル無し木の類似性最適化問題としてNP困難であることが示された希少な事例を与えるものであり,このことが評価されて国際会議IIAI-AAI2013で論文賞を受賞している.また,3-(1) に代表される,オンライン組み合わせ最適化問題に関する一連の成果が評価され,これらの研究で中心的な役割を果たしてきた研究代表者と研究分担者の畑埜氏は,2013年度だけで計7件の招待講演を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画として掲げている3つの項目について,引き続き多角的な視点から研究を行う.特に,異なる学習問題の間の学習の複雑さの関係解析について,研究実績の概要 3-(2) に示したように有望な進展があったので,この部分の研究体制を強化するため,本年度から吉仲氏を研究分担者に加える.氏は,これまでも連携研究者として本研究課題に携わり,3-(2) の成果を上げた中心人物でもあるため,これにより,本研究がより一層加速することが期待される.
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