研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
24107004
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
工藤 昭彦 東京理科大学, 理学部, 教授 (60221222)
|
研究分担者 |
井上 和仁 神奈川大学, 理学部, 教授 (20221088)
酒井 健 九州大学, 理学研究院, 教授 (30235105)
加藤 英樹 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60385515)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 光触媒 / ペルオキソ法 / 分子触媒 / 光生物学的水素生産 / 水素 / 金属酸化物 |
研究実績の概要 |
工藤は,溶融塩処理によるワイドバンドギャップ光触媒の可視光応答化を行った結果,Li2TiO3をCuClの溶融塩処理によりCuイオン交換することにより,可視光照射下で水素生成に高活性を示すCu-Li-Ti酸化物を開発できた。また,可視光照射下で水素生成に高活性を示す金属硫化物光触媒を用いたZスキーム型光触媒の開発に成功した。加藤は,ニオブおよびタンタルの水溶性ペルオキソ錯体を利用することによりLa-(Nb,Ta)-O,Ca-Nb-O,Ba-Ta-Oの前駆体が得られること,ならびに本前駆体を窒化処理することで酸窒化物光触媒が合成できることを見出した。さらに,この方法で合成したLaTaON2光触媒は,従来法で合成した試料に比べて約2倍の水素生成活性を示すことを突き止めた。一方,工藤と加藤の共同研究成果として,錯体重合法を利用して欠陥カルコパイライト型硫化物光触媒を合成し,高効率化に成功した。酒井は,電子貯蔵サイトとしてビオローゲンを有する白金錯体が優れた水素生成触媒特性を示すことを明らかにした。また,フッ素を置換基として有するコバルトポルフィリン錯体及び銅フタロシアニン錯体が優れた酸素発生触媒特性を示すことを明らかにした。井上は,シアノバクテリアAnabaenaPCC 7120ΔHup株を親株としてニトロゲナーゼのNifDに結合している活性中心FeMoコファクターの近傍に位置しているアミノ酸残基を二点交差組み替えにより置換した株dc-Q193Sとdc-R284Hを作出した。窒素気相下や空気下で,Ar気相下とほぼ同程度の持続的な水素生産能を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶融塩処理という可視光応答性光触媒を開発する新たな手法を確立した。さらに,可視光,太陽光水分解が可能な新規Zスキーム型光触媒の開発にも成功した。一方,光触媒の高効率化において新規合成手法の開拓は重要な課題であり,それに対して新しいペルオキソ法を開拓した。一方,生物学的プロセスでは,今年度作成したシアノバクテリアのニトロゲナーゼ系改良株dc-Q193S と dc-R284Hは窒素気相下や空気下で,Ar気相下とほぼ同程度の持続的な水素生産能を示すことを突き止めた。これらの成果から判断して,おおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
可視光照射下および太陽光照射下で水分解に活性を示す多用な光触媒および半導体光電極系を開発する。これまでに開発してきた水素および酸素生成金属酸化物および硫化物光触媒を多様な電子伝達系により複合化することにより,新たなZスキーム型光触媒を開発する。それにより,ソーラー水分解効率の向上を狙う。(工藤) 本研究にて開発したLaTaON2-NaTaO3固溶体光触媒は欠陥が多いという問題を抱えている。LaTaON2-NaTaO3固溶体の合成に本研究で開発したペルオキソ法を適用することで良質な試料合成を検討し高効率化を図る。(加藤) 今後は,分子触媒を酸化チタンなどの基盤上に固定化した修飾電極を作製し,その機能評価を行う。(酒井) シアノバクテリアについて代替ニトロゲナーゼ優先発現株やアンテナ削減株の作成も進んでいるので,改良株の作成後,水素生産性を調べる。800-900 nmの近赤外光を利用する光生物学的水素生産を実現するため,紅色光合成細菌の光合成系やニトロゲナーゼ系の改良株を作成する。水素低透過性プラスチックバッグを用いたバイオリアクターによる水素生産の実証試験を継続する。(井上)
|