研究領域 | プラズマ医療科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
24108002
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀 勝 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80242824)
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研究分担者 |
鈴置 保雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10115587)
加藤 昌志 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10281073)
秋山 真一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20500010)
平松 美根男 名城大学, 理工学部, 教授 (50199098)
近藤 博基 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345930)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 医療 / がん細胞 / アポトーシス / カーボンナノウォール |
研究概要 |
①大気圧プラズマの気相・液相計測と表界面反応の解明:大気雰囲気でのプラズマ放電では雰囲気ガス巻き込みがその生成・維持に影響を与え、最終的に上記の細胞内分子反応にも影響を与えているものと考えられる。そこでこれまでに実施している粒子計測やガス流れ分析に加え、大気圧プラズマでの真空紫外光の発生とその影響について調査した。ガス流を伴う大気圧プラズマ生成では巻き込まれた雰囲気ガス分子の解離および発光により高エネルギーの光が発生するとともに、ガス流れによってその影響が比較的遠方まで到達することを明らかにした。そのプラズマ下流に置かれた培養液や生体物質に発生するラジカルを電子スピン共鳴法により観察した。培養液中に発生する・OHラジカルを計測し、過酸化水素の生成などについて詳細な解析を進めた。 ②プラズマがん治療への応用と細胞内分子機構の解明:名古屋大学医学部との共同研究により、プラズマ培養液が抗がん剤耐性卵巣がん細胞に対して抗腫瘍効果をもたらすことをIn vitro(培養細胞実験系)及びIn vivo(動物実験系)において証明した。細胞内分子機構の解明を目指した研究では、プラズマ培養液を投与した脳腫瘍培養細胞においては、生存・増殖シグナリングネットワークを抑制することを発見した。またプラズマのメラノーマ細胞内分子への影響を明らかにした。 ③バイオ材料としてのカーボンナノウォールなどを用いた表面加工技術の開発:細胞は周りの環境の影響を受け、プログラム細胞死を誘導したり、増殖・再生を促進したりするが、細胞応答を制御することを目的としたバイオ材料の開発を目指してカーボンナノウォールの表面加工や解析を行った。 ④その他(学外共同研究など) 大阪大学とのプラズマ生体分子の相互作用の解明(新学術領域内共同研究)、名城大学とのプラズマ滅菌(新学術間共同研究)など多岐にわたる共同研究を展開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①大気圧プラズマの気相・液相計測と表界面反応の解明:これまでに構築してきたレーザ装置や各種光源を用いた気相分光法による粒子計測や、シュリーレンシステム(平成24年度の設備費で購入)によるガス流れ分析などを実施している。本件に関して2報の論文を公表している。名古屋大学の装置以外にも、大阪大学、富山大学などの他の研究班が使用・開発しているプラズマ装置の成分分析にも着手している。また、応用先に適した新たなプラズマ装置の開発もA02班、A03班からの要望をもとに進め、現在ではそれぞれの研究現場で使用されている。以上のようにプラズマ成分分析および医療用プラズマ装置の開発は順調に前進しているといえる。プラズマによって気相生成する活性種と液相との相互作用についても研究が進展し、順調に進んでいる。 ②プラズマがん治療への応用と細胞内分子機構の解明:産婦人科との共同研究の成果をPLOS ONE誌に公表するとともに新聞発表により社会への発信も行った。細胞内分子機構の解明を目指した研究では、我々はプラズマ培養液がグリオブラストーマなどのがん細胞において特異的に異常に活性化されているAKT、ERK、mTORなどの生存・増殖シグナリング分子の活性を抑制していることを発見し、これらの成果をPlasma Medicine誌に投稿し受理された。その他合わせて論文4報と21件の学会発表を達成した。 ③バイオ材料としてのカーボンナノウォールなどを用いた表面加工技術の開発:バイオ応用のためのカーボンナノウォールなどを用いた表面加工技術で8報の論文と15件の学会発表を達成した。 ④その他(共同研究など):名城大学との共同研究で3報、大阪大学との共同研究により2報、その他にもいくつか①~④まで全て合わせて論文29報と100件の学会発表を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
①大気圧プラズマの気相・液相計測と表界面反応の解明 平成26年度は引き続き、各種大気圧プラズマ装置から供給される成分の気相分析とともに、その分析データをもとにしたラジカル、フォトンなど特定の粒子のみを選択的に供給する大気圧プラズマ装置の開発に取り組む。それら装置をもちいたプラズマ培養液中に発生する化学種の詳細な分析に取り組む。 ②プラズマがん治療への応用と細胞内分子機構の解明 プラズマ培養液がグリオブラストーマ培養細胞における生存・増殖シグナリングネットワーク及びその周辺のシグナリングネットワークにおいてどのような分子に影響を与えるのかを調べる。また平成25年度までに取得したcDNAマイクロアレイ実験の膨大なデータを解析及びフォローアップ実験することによりゲノム規模での遺伝子発現の変化に関する知見を蓄積する。これらのアプローチによりプラズマのがん細胞に対するアポトーシス誘導機構と選択的殺傷機構をより深淵かつ統括的に理解することを目指す。また殺傷と再生・増殖を制御するプラズマの条件を探索しその細胞内分子機構の解明を目指す。 ③バイオ材料としてのカーボンナノウォールなどを用いた表面加工技術の開発 現在開発されているバイオ材料を用いて、幹細胞、がん細胞、正常細胞など様々な種類の細胞の細胞応答を調べ、細胞への効果を調べる。
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