計画研究
本研究課題では、医療への応用に向けてプラズマと生体との相互作用を解明すべく、生体の階層性に着目して、分子・細胞・組織・個体といった各生物学的階層についてプラズマ照射の影響を定量的に把握する方法論の確立と系統的解析を行った。前年度に引き続きプラズマ照射によって細胞培養液中に生成する活性種計測を行った。その結果、本研究で用いたプラズマ源においては、比較的短寿命であるOHラジカル、スーパーオキシドと、過酸化水素・硝酸イオン・亜硝酸イオンといった長寿命生成物を培養液中に生成しており、その生成特性には導入ガスの湿度が大きく影響することが示された。同時に、抗腫瘍効果において重要な因子である過酸化水素は、液中で生成したOHラジカルの再結合によるものよりも、気相中で生成したものの寄与が大きいことが示された。また、前年度に開発したDNA損傷を迅速に計測する新たな実験系を用いて、細胞内部へのDNA切断因子の浸透性を考察した。この実験では、蛍光ラベルしたDNA分子を人工細胞モデルに内包させ、これに対してプラズマを照射した。その結果、プラズマ照射は人工細胞モデルを破壊しないが、その内部にDNA損傷を引き起こすが示された。さらに、多層構造を有する枯草菌芽胞において、プラズマが生成する活性種が時間と共に徐々に均一に枯草菌芽胞内部に浸透していき、内膜に到達することで枯草菌芽胞が不活化することが示唆された。以上の結果は、プラズマと生体との相互作用において、プラズマが水溶液中の化学反応を誘起して活性種を生成し、細胞壁・細胞膜を介してこれらが細胞内部に侵入して生体高分子に影響を与え、細胞死などの細胞応答を示すというフレームワークが多様なモデルにおいて共通していることを示している。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 16件、 招待講演 5件)
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