研究領域 | プラズマ医療科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
24108007
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
清水 伸幸 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (70262128)
|
研究分担者 |
浜窪 隆雄 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90198797)
張 京浩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50302708)
山下 裕玄 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50599397)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | プラズマ医療科学 / 酸化ストレス / レドックスシグナリング / 低侵襲治療 |
研究概要 |
低侵襲治療を発展させるために実用化が望まれているプラズマ照射装置の医療機器による止血装置の止血能力や癒着軽減といった現象は、患者にとって望ましいものの、そのメカニズムについては不明な点が多い。我々はこれまで慢性炎症が疾病を発症させるメカニズムとして、レドックスシグナリングを中心に検討してきた。本研究では、プラズマ機器が実臨床の場で用いられるために欠くことのできない、正常組織や炎症組織に対する酸化ストレスが引き起こす様々な病態において生じているシグナルの変化に対して、プラズマ照射が及ぼす影響を検討した。 本年度当初は、止血装置として実用化に最も近い池原班班員の榊田研究室で作成されたマイルドプラズマ照射装置を用いた実験を予定していたが、本機によるプラズマ照射では培養細胞系で細胞死が観察できなかった。そのため幾つかの検討を重ねた結果、腫瘍細胞死のメカニズム解明に対しては、本研究領域長の名古屋大学堀勝教授の研究室で作成したプラズマ照射装置『はばひろ』によるプラズマ照射を施した細胞培養液を利用することで生じる細胞死がメカニズム解明に適していると判明したために、この装置で作成された培養液を用いた検討を進めた。このプラズマ照射培養液は用量依存性に細胞傷害性を示し、この際に主要なMAP kinaseを強く活性化しており、細胞傷害性が過酸化水素由来であることを強く示唆する研究結果を得た。 一方で止血装置としてのマイルドプラズマ照射装置の有効性を検討する目的で、対照群としての現行の止血装置を用いたマウス腹腔内癒着モデルの作成を行った。術後7日目にすべてのマウス腹腔内で癒着が形成される焼灼強度と麻酔方法を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたマイルドプラズマ照射装置の搬入が遅れたため、本プラズマでの検討が遅れたのみならず、本器によるプラズマ照射の検討が腫瘍細胞死や正常細胞増殖活性の検討には向かないことが判明した。このため実験の計画を修正し、腫瘍細胞死の検討は、本研究領域長堀勝教授研究室のプラズマ照射装置による検討に変更し、一方で医療機器としての実用化に一番近いと思われる榊田研究室のマイルドプラズマ照射装置に関しては癒着の軽減とそのメカニズムの検討を進めることとして、その検討ための実験モデルを作成した。このような計画修正に伴い、研究達成度はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
培養細胞に対するプラズマ照射の及ぼす影響に関しては、平成25年度中に培養細胞へのプラズマ照射の影響をある程度確認できたので、さらにシグナルの詳細を検討し、培養条件による反応性の相違やプラズマ照射によるいずれの因子が細胞増殖と細胞死に最も影響を与えているかの検討を行う。一方で当初研究の中心と考えていた、止血装置として開発が進んでいるマイルドプラズマ照射装置の有効性の確認を引き続き進めていく予定であり、平成25年度中に確立した腹腔内癒着モデルを対照に、マイルドプラズマ照射に対する生体(マウス)の反応を、マクロレベルとミクロレベルで確認していく。 これらの検討には、本年度も行ってきた増殖シグナル関連蛋白質のシグナルの変化、特にレドックスシグナルを比較検討することに加えて、浜窪研究室で行っている高親和性抗体を低ノイズの磁性ビーズに固定化したものを利用するターゲテドプロテオミクス解析を行う。 プラズマが臨床応用される場面では、生体に炎症が生じている可能性が高いものと想定されている。培養細胞に一酸化窒素供与薬などを添加することで炎症反応を惹起させた状態の細胞にプラズマ照射を行い、炎症状態の細胞に対するプラズマ照射の影響も明らかにしていく予定である。
|