研究領域 | プラズマ医療科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
24108008
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉川 史隆 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40224985)
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研究分担者 |
梶山 広明 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00345886)
丸山 彰一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362253)
水野 正明 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院教授 (70283439)
豊國 伸哉 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90252460)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 癌治療 / 再生医療 / フリーラジカル |
研究実績の概要 |
癌治療に対するプラズマの応用:これまでの研究成果においてプラズマの直接照射によりヒト卵巣癌細胞株に対する抗腫瘍効果を見出している。プラズマ処理により活性型PARPの発現が惹起されたことに加え、フローサイトメトリーによるAnnexin-V staining解析の結果によりアポトーシスによる細胞死が誘導されたことを明らかにした。さらに、プラズマを照射した培養液を細胞に作用させた間接照射においても、ヒト卵巣癌細胞株ならびにヒト脳腫瘍細胞株に対し照射時間依存的に抗腫瘍効果が増強する傾向を示した。このプラズマ照射培地中において、プラズマにより生成される活性種の1種であるH2O2の濃度がプラズマ照射時間依存的に上昇することから、ROSの抗腫瘍効果への関与が示唆された。さらに脳腫瘍細胞株において、プラズマ照射培地処理によりAKT活性を抑制することが明らかとなり、細胞の生存・増殖を制御するシグナル伝達に影響していることが明らかとなった。 再生医療に対するプラズマの応用:培養ヒト脂肪由来間葉系幹細胞へのプラズマ照射において、幹細胞活性化の指標の一つである再生増殖因子、HGFの分泌量が増加することが明らかとなり、幹細胞増殖促進効果が示唆された。さらに、ラット皮膚潰瘍モデルにおける皮膚再生能に対するプラズマの直接照射の効果を検討したところ、プラズマ照射により皮膚の再生が促進されることが明らかとなった。 プラズマの生物学的作用に与える分子機序の解明:生体分子(核酸、蛋白質、脂質)にプラズマを照射し、フリーラジカル反応による切断・重合・修飾変化を電気泳動や既に開発したフリーラジカル反応に対するモノクローナル抗体を用いて評価を行ったところ、プラズマ照射は、生体分子の酸化ストレス傷害を誘導することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、本学術領域研究の初年度として、細胞レベルにおけるプラズマの効果について、癌治療・再生医療をターゲットとし、細胞増殖能に対するプラズマの効果に関する基礎的データの収集を中心に行った。癌治療においては、ヒト卵巣癌細胞株並びにヒト脳腫瘍細胞株を用い、プラズマ照射培地の有する抗腫瘍効果のキャラクタリゼーションがおおむね完了した。再生医療においては、培養ヒト脂肪由来間葉系幹細胞へのプラズマ照射により再生増殖因子の分泌が増加することを確認しその効果を実証するに至った。さらに、分子機序の解明を行うため、プラズマから生成されるフリーラジカル反応による酸化ストレス傷害に関して検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果により、プラズマが細胞に与える死滅・増殖効果が明らかとなった。その効果をもたらす主要因として、プラズマにより生成されるROSがその一端を担っていることが推察されており、今後このROSと細胞の様々な生命現象への影響を検討することで、プラズマが与える効果をさらに効率よく利用することが可能になると予想される。そこで、プラズマが細胞に与える効果を、網羅的手法を用いて調査を行い、そのメカニズムを細胞レベルでさらに深く追求し、治療技術としてのプラズマ装置開発へのフィードバックを行っていく。 一方で、生物個体レベルでの治療効果を検討するために、各種動物モデルを用いた治療効果の検討を行い、臨床応用への可能性も検討する。今年度は、プラズマの直接照射に加え、間接照射による抗腫瘍効果を明らかにし、そのアプリケーションの幅を広げることを期待している。よって、直接ならびに間接プラズマを用い、癌性腹膜炎モデルや皮下腫瘍形成モデルなどへの治療効果を多角的に検討していく。
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