計画研究
がん治療に対するプラズマの応用:これまでの研究成果によりプラズマ活性化培養液(plasma activated medium: PAM)が卵巣がん細胞や脳腫瘍細胞株に対して、抗腫瘍効果を示すことが明らかになっている。本年度は、細胞内でのPAMの作用機序を分子生物学的に解明することを目的とし、脳腫瘍細胞で恒常的に活性化されているPI3K-AKT、RAS-MAPKシグナル伝達経路などの生存・増殖シグナル伝達経路がPAMにより抑制されることを発見し、アポトーシスが誘導される細胞内分子機構モデルを提唱した。また治療を目指した研究において、卵巣がん細胞と腹膜中皮細胞のプラズマ感受性を比較し、がん細胞の方がプラズマにより細胞死誘導されやすいことを証明した。この成果は、卵巣がん腹膜播種モデルへのPAMの腹腔内投与療法を検証するにあたり、がん細胞殺傷に効果が見られる可能性を示唆した。再生医療に対するプラズマの応用: 低血清培養ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(LASC)は、高い分化能とサイトカイン分泌能さらに高い抗炎症作用を持つことが示されている。本年度は、LASCの再生・免疫調整能に有効なgrowth factor(HGF, VEGF)の分泌変化を指標に、低血清培養法とPAMの併用によるPAMの効果について検討を行った。その結果、PAMの刺激によってLASCの免疫調整能を制御できる可能性が示唆された。プラズマ作用の分子メカニズム: 低温プラズマ照射の主体は、ヒドロキシラジカルの発生と紫外線であることを、電子スピン共鳴、脂質過酸化、DNA修飾塩基の生成、紫外線照射産物生成などの方法論から示した。さらに、中皮腫細胞にも低温プラズマは治療効果があり、臨床予後の悪い肉腫型の方が上皮型よりプラズマ耐性であった。この現象には鉄代謝が関連しており、鉄の前負荷でプラズマ治療効果改善があることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は、プラズマ活性化培養液(plasma activated medium: PAM)を用いた臨床応用を目指した研究として、プラズマの悪性細胞に対する効果を現象論だけではなく、分子メカニズムの解明を根底に臨床応用への礎とするものである。がん細胞への効果について、生存・増殖シグナル伝達経路がPAMにより抑制されることを発見し、PAMは、生存・増殖シグナリングネットワークを抑制することにより脳腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するという細胞内分子機構モデルを提唱した。さらに、治療を目指した研究として、卵巣がん細胞と中皮腫細胞を用い、細胞におけるPAM感受性の違いを明らかにし、動物モデルに対する治療効果を示唆した。一方、低血清培養ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(LASC)調整法へのPAMの応用は、再生医療において課題の一つである幹細胞の安定抽出・維持・供給に対して技術革新を行うことを目的としている。LASC調整を基盤としている為、扱いやすいがん細胞とは異なり、基礎データの収集に時間を要しているが、しっかりとした基盤を作ることが今後の応用には必須であると考えている。本年度は本学術領域の中間審査を終え、客観的評価として自己点検同等の評価を得ている。
がん治療に対するプラズマの応用: プラズマ活性化培養液(plasma activated medium: PAM)が卵巣がん細胞、脳腫瘍細胞並びに中皮腫細胞等、幅広いがん腫に対して抗腫瘍効果を示すことが明らかとなっている。次年度以降において、動物モデルにおけるPAMの治療効果を中心に、更なる分子メカニズムの解明を行う。具体的には、マウス卵巣がん腹膜播種モデル、およびラット中皮腫モデルを用いた治療効果の検証と、効果的な治療方法の開発を行う。加えて、脳腫瘍細胞株をはじめ、種々細胞株を用いたPAMによる生存・増殖シグナル伝達経路の制御機構につてさらに詳細に検討する。再生医療に対するプラズマの応用: ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)の調製における低血清培養法とPAMの併用は、免疫調整能を高める作用があることが明らかとなった。今後は高品質で安定培養可能なASC調整法の開発を目的とし、効果的なPAM併用培養技術について検討する。プラズマ作用の分子メカニズム:低温プラズマ照射の主体は、ヒドロキシラジカルの発生と紫外線であり、PAMはヒドロキシルラジカルに起因するRONS(reactive oxygen nitrogen species)であることが明らかになっている。これらを踏まえ、プラズマ作用に対し既存の医学生物学における位置づけを行い、その効果を修飾する主な因子を選出する。そして、プラズマ照射ならびにPAMによる最適な臨床応用法の開発につなげる。
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