研究領域 | プラズマ医療科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
24108009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 昭代 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10136484)
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研究分担者 |
後藤 昌昭 佐賀大学, その他部局等, 教授 (10145211)
平田 美由紀 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30156674)
柳生 義人 佐世保工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40435483)
米須 章 琉球大学, 工学部, 教授 (90220764)
古閑 一憲 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (90315127)
北崎 訓 福岡工業大学, 工学部, 助教 (70713147)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ / ナノマテリアル / 健康影響評価 / 体内動態 / 医療科学 / プラズマ照射水 |
研究実績の概要 |
プラズマ・ナノマテリアルの健康影響をマイク、ミクロスケールから定量的に解析し、安全性に関するガイドラインを構築することを目的としている。 マクロ解析班では、空気誘電体バリア放電をヘアレスマウス背部皮膚へ照射し、照射部位皮膚に凝固壊死が観察された。照射時間の延長と伴に病変の程度は進展し、プラズマ照射による皮膚病変発現が示唆された。液中プラズマ法で大量作製したInナノ粒子をラット皮下に投与し、Inは体内の各臓器に移行し、一部は糞、尿から排泄されることが明らかになった。LFプラズマジェットを用い、カイコ幼虫にプラズマ照射を行った。放電電圧が高く、照射時間の延長と伴に、致死率が増加した。放電電圧が8kVの場合、2分間のプラズマ照射で影響が発現することが明らかになった。 ミクロ解析班では、ヒト単球系がん細胞U937を用いてアポトーシス解析、遺伝子損傷解析、細胞周期解析によりプラズマ照射の細胞毒性評価を行った。プラズマ照射直後数時間内に遺伝子損傷が入り、20時間程度以上経過後アポトーシスが顕著になることを明らかにした。酵母の遺伝子発現をDNAマイクロアレイ法により解析し、プラズマ照射直後(0時間)の方が24時間後よりも変動が大きく,発現が増加するDNAが多い傾向を示し, 24時間経過した酵母DNAは0時間と比較して発現変動遺伝子が減少する傾向を示した。 プラズマ・ナノマテリアル創製とプラズマ内部パラメタ解析班では、液中プラズマを用いたIn, Au, Ptナノ粒子の大量作製に成功し、各1次粒子径は各々6.2 nm、6.7 nm、5.4 nmであった。プラズマ照射効果の定量解析法についてヨウ素デンプン反応を用いて評価し、プラズマ酸化力の視覚化と定量化に成功した。生体に対するプラズマ照射効果は、γ線照射と比べて健康影響が少ないまま、3桁以上高い酸化作用を与えることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロ解析では、マウスおよびカイコに対するプラズマ照射の毒性評価を行い、安全性評価の閾値の検索を可能とし、一部については閾値を得る事に成功した。また、液中プラズマ法で生製したInナノ粒子をラット皮下に投与し、長期にわたり体内動態を検討することに成功した。その結果、脳、骨を含めた体内臓器にInは分布し、糞、尿より排泄されることが明らかになった。さらに、その一部はナノ粒子の形態で全身循環を巡ることが示唆された。 ミクロ解析では、U937、酵母に対するプラズマ照射の毒性評価を、アポトーシス解析、遺伝子損傷解析、細胞周期解析、遺伝子発現変動解析から評価を行い、毒性についての定量評価を可能にする基盤評価技術の確立に成功した。 ナノマテリアル創製とプラズマ内部パラメタ解析では、液中プラズマによる実用的な速度でのナノ粒子作製をInのみならずAuやPtにおいても可能であることを示した。またヨウ素デンプン反応を用いたプラズマ照射効果の簡易定量化にも成功し、様々なプラズマの照射効果を定量的に比較検討可能な要素技術を確立した。 以上の成果より、当初の達成目標に概ね到達していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
マクロ解析班では、サイズを制御したInナノ粒子の大量生成法が確立したことによって、Inナノ粒子の大量生成を行い、実験動物の気管内投与を行い、体内動態について評価し、平成27年度に実施したInナノ粒子の皮下投与と気管内投与による体内動態の違いについて比較検討を行う。プラズマ照射水(PAM)の早期の臨床応用が期待されることから早急なPAMの安全性評価が必要である。そこで、PAMをマウスの腹腔内に連続投与を行い、PAMの腹腔内臓器に及ぼす影響について評価を行う。 大気圧プラズマ照射の影響についてジェット型DBDプラズマ源と接触型DBDプラズマ源を用いて、アレスマウス皮膚へ照射し、プラズマ源の違いによる皮膚病変発現に及ぼす影響について比較検討を行う。 マウスやカイコへのプラズマ照射効果について、プラズマ内部パラメタ解析班で開発した指標を用いて閾値のプラズマパラメタによる定量化を行う。 ミクロ解析班でも同様に、細胞や酵母に対するプラズマ照射の影響をラズマ内部パラメタ解析班で開発した指標を用いて定量的に評価する。 ナノマテリアル創製とプラズマ内部パラメタ解析班では、シナジー効果の評価とプラズマ照射効果の指標化について研究遂行する。まずはAu、Ptナノ粒子を用いてナノマテリアルとプラズマのシナジー効果について大阪大節原グループと連携して検討する。プラズマ照射効果の指標化については、豊橋技科大水野グループと連携してプラズマ照射によるDNA損傷の指標化を行う。また名古屋大学堀グループ、産総研池原グループと連携してプラズマによる生成粒子の定量評価を行う。
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