研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
24109003
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松尾 司 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90312800)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 低配位典型元素化合物 / 高周期14族元素 / 不飽和結合 / 感応性化学種 / 合成化学 / ジシレン / ジゲルメン / ジホスフェン |
研究実績の概要 |
本研究では、高周期14族元素などの低配位典型元素化合物を創製し、高度に分極した不飽和結合に由来する反応性の探究を通して、典型元素化合物に関する物質科学研究の新領域の開拓を目指している。独自に開発した嵩高い縮環型立体保護基(Rind基)の導入によりケイ素やゲルマニウムを含む新しい不飽和化合物を合成し、それらの分子構造や化学結合について解明するとともに、結合電子に由来する特異な反応性を開拓することを目的とする。領域内の研究者との連携や共同研究によって、典型元素の本質的特性に基づく新反応を探究し、本領域研究が目指す「感応性化学種」の新しいサイエンスに立脚した革新的な分子変換反応の開発に貢献することを目標とする。 平成27年度は「パイ共役系ジシレン化合物」に関する研究成果のとりまとめを行った。ケイ素ーケイ素二重結合とベンゼン環が交互に配列したオリゴマーを単離し、共平面性に優れた分子構造と主鎖骨格の共役に基づく光・電子物性について実験化学と理論化学の両面から明らかにした。また、ジシレンに多環芳香環であるピレニル基が置換した「ジピレニルジシレン」を合成し、Z体の分子構造と電荷移動発光現象について解明した。さらに、「パイ共役系ジゲルメン化合物」に関する合成研究を行った。 また平成27年度は、ケイ素上にかさ高いRind基を2つ有するジアリールシランの合成法を確立し、ジアリールジブロモシランの還元による「ジアリールシリレン」の合成と分子構造について調査した。さらに、Rind基を有する13族元素水素化物とピリジン類との反応について調査するとともに、ジホスフェンとNHCとの反応ではリンーリン二重結合の切断に伴い「ホスフィニデン・NHC錯体」が生成することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究によって合成した「低配位典型元素化合物」に関する研究成果が順調に取りまとめられている。「ヘビー級ケトン」の系統的な創製に向けて、高周期14族元素の二価化学種「メタリレン」の合成研究が着実に進められており、反応性の開拓などの今後の展開が期待できる状況である。領域内の研究者との連携・共同研究も加速しており、金属錯体や触媒の配位子としての応用も進められている。当初の計画であった14族元素のみならず、13族元素や15族元素の「感応性化学種」の研究も進められており、さらなる共同研究成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
「低配位典型元素化合物」を基盤とした「官能性ジシレン化合物」「ホスファアルケン触媒配位子」「遷移金属シリリン錯体」などの研究成果を取りまとめるとともに、未踏の「ヘキサメタラベンゼン」「オリゴジメタレン」の合成にアタックする。ケイ素やゲルマニウム、スズなどの高周期14元素不飽和結合を連結した従来にない「重い共役電子系物質」の創製にチャレンジする。領域内研究者との連携や共同研究をさらに強化することで、周期表にある様々な元素の「感応性化学種」に対する「嵩高いRind基の速度論的安定化効果」について検証を進める。典型元素化学に限らず、配位不飽和な遷移金属錯体の創製など、金属錯体化学や触媒化学分野への応用を推進する。
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