研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
24109004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩本 武明 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70302081)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 安定ラジカル / ホスフィニルラジカル / アンチモン / ビスマス / 遷移金属 |
研究実績の概要 |
(重点課題1)安定な二官能性典型元素開殻化学種の合成と基礎物性の解明 これまでに嵩高い環状ブタン-1,4-ジイル基を用いて、高周期15族元素であるアンチモンおよびビスマスの二配位ラジカルを溶液中安定な化合物として合成することに成功している。しかし、これらのラジカルは溶液中では二量体との平衡にあり、結晶中では二量体として存在する。今年度はより嵩高いアルキル基を用いて、結晶中でも二量化しない安定なラジカル種の合成を検討した。その結果、より嵩高い環状ブタン-1,4-ジイル基を用いて、アンチモン中心中性二配位ラジカル(スチビニルラジカル)の合成単離に成功し、X 線構造解析、ESR、紫外可視吸収スペクトルを用いて、溶液中及び結晶中で二量化しないラジカルであること、そして分子構造と電子状態の詳細を明らかにした。また、不対電子と空軌道を合わせもつ13族中性二配位ラジカル種の前駆体の合成を検討した。 (重点課題2)二官能性典型元素開殻化学種の反応性の解明と応用 ジアルキルホスフィニルラジカルを配位子に持つ8族遷移金属錯体の合成を検討した。ジアルキルホスフィニルラジカルと鉄アミド錯体などの鉄(II)錯体との反応は複雑な混合物を与えたが、有機配位子をもつ鉄(0)錯体との反応では、鉄上の有機配位子にホスフィニルラジカルが付加した特異な配位子変換生成物を与えることを見出した。得られた錯体の構造はX線構造解析で確定した。また、高周期14族二価化学種であるシリレンが拡張π電子系有機化合物に対して位置選択的に環化付加し、特異な電子状態を持つ新たなπ電子系有機化合物を与えることを見出した。 〔連携研究者〕 東北大学・大学院理学研究科 石田真太郎 理論計算
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(重点課題1)安定な二官能性典型元素開殻化学種の合成と基礎物性の解明 リン中心ラジカルに続き、アンチモン中心の中性二配位ラジカルの合成・単離に成功し、一連の二官能性高周期15族中心ラジカルの構造と性質の系統的な解明に向けて順調に研究が進展している。 (重点課題2)二官能性典型元素開殻化学種の反応性の解明と応用 8族遷移金属錯体とホスフィニルラジカルとの反応で、金属上の有機配位子に対してホスフィニルラジカルが付加して有機配位子の骨格および電子状態の変換が起こることを見出している。この反応は、これまでの10族金属錯体との反応と異なるものであり、ホスフィニルラジカルの多様な反応性の側面を見出しつつある。また、関連して高周期14族原子二価種が拡張π電子系骨格を変換する反応を見出しており、この課題についても順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(重点課題1)安定な二官能性典型元素開殻化学種の合成と基礎物性の解明 嵩高い環状ブタン-1,4-ジイル基を活用して、アンチモンよりも重元素であるビスマス中心ラジカル種の合成を進める。X線構造解析を用いた分子構造の解明や、ESRや紫外可視吸収スペクトルなど各種分光学的手法を用いて電子状態の解明を行い、15族元素中性二配位ラジカルの分子構造と電子状態の系統的理解を進める。 (重点課題2)二官能性典型元素開殻化学種の反応性の解明と応用 これまでに合成した単離可能なホスフィニルラジカルおよびスチビニルラジカルの二官能性を反応性の側面から明らかにする。また、種々の8族遷移金属錯体とホスフィニルラジカルとの反応で、ホスフィニルラジカルを配位子にもつ8族遷移金属錯体を合成し、その構造と電子状態を明らかにする。また高周期14族原子二価種を用いたπ電子系骨格変換反応についても精査する。
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