研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
24109005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山子 茂 京都大学, 化学研究所, 教授 (30222368)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | ラジカル反応 / 光反応 / リビングラジカル重合 / 反応制御 / テルル |
研究概要 |
有機テルル化合物を用いた光ラジカル反応における光量と反応経路の関係を明確にした。従来は、有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合(TERP)を光照射化で行う場合には、500W水銀ランプと減光フィルターや波長選別フィルターを組み合わせて光照射を行っていたが、どのぐらいの弱い光でも充分であるのか、という点は不明であった。種々検討した結果、市販の6Wの白色発光ダイオードを用いても十分に活性化が行われ、場合によってはさらに減光フィルターを組み合わせる方が制御の向上に有効であることを明らかにした。これにより、エネルギー効率のみならず、装置の導入の点でも優位な重合反応条件を明らかにした。さらに、ジテルリド化合物を重合系に添加した場合、室内照明に用いている蛍光灯でさえも光活性化に有効であり、重合速度が増大することを明らかにした。これまで重合速度にばらつきが生じる問題があったが、この原因を特定できたものと考えている。 TERPは極めて汎用性の高い重合法であるが、酢酸ビニルの重合の制御はこれまで困難であった。それは、重合で生じる頭―頭結合に由来する休止種の活性化が困難であるためである。一方、Co触媒を用いた重合は、多くの共役モノマーの重合制御は困難である一方、酢酸ビニルの重合制御を高度に行える興味深い重合系である。そこで、重合末端でのCoからTeへの変換反応を行うことで、Co触媒を用いて合成した構造の制御されたポリ酢酸ビニルをマクロ開始剤として用い、TERPを行う検討を行った。その結果、CoからTeへの交換反応を行う条件を明らかにすると共に、それにより合成したマクロ開始剤から共役モノマーの重合を行うことで、従来法では合成できない新規ブロック共重合体の制御合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
有機テルル化合物の活性化が極めて微弱な光で十分に行えることを明らかにし、産業化への応用における問題点をクリアできた点は極めて重要であった。
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今後の研究の推進方策 |
有機テルル化合物の光活性化が、極めて効率的にかつ副反応無く進行することから、この反応を利用することで、ラジカル重合における重要な未解決課題である、停止機構の解明に有効である可能性が明らかになってきている。そこで、その課題に注力する。さらに、不活性な炭素―テルル結合の光活性化による酢酸ビニルの重合制御の可能性についても引き続き検討を行う。
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