研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
24109008
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安倍 学 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30273577)
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研究分担者 |
古川 貢 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (90342633)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 一重項ジラジカル / π単結合 / マクロ環 / ストレッチ効果 |
研究実績の概要 |
本新学術領域研究では,精緻に構造制御された分子性化合物の多くが,外場からの物理的・化学的刺激に鋭敏に応答して物質機能の要である高エネルギー化学種に容易に変化する「感応性化学種」である点に着目し,その合理合成法と構造・反応・物性について異分野融合型の研究組織を用いて追求することにより、真に独創的な機能性物質群を創造することを目的としている.A02班では,特に,新物性創出のための感応性化学種に焦点をあてた研究を推進している.その中で本計画研究の役割は,光に鋭敏に応答し優れた機能を発現する新規な感応性化学種の創製を目指し,未開拓結合様式「π単結合」を持つ化合物群の創製とその新規な高エネルギー結合から生まれる新たな機能を精査する,である. 平成26年度の研究では,これまで,室温で数マイクロ秒程度の寿命であったπ単結合性を有する一重項ジラジカルをマクロ環内に導入することと,マクロ環骨格によるストレッチ効果を利用した一重項ジラジカルの長寿命化を目指した.一重項ジラジカルの前駆体となるアゾ骨格(-N=N-)をマクロ環内に導入する合成手法の開発から開始した.PtとSn置換基とのトランスメタル化反応により,マクロ環合成の前駆体となるジブロマイドの合成し,最終段階で,Niを用いたカップリング反応によりマクロ環骨格内へのアゾ官能基の導入に成功した.そのマクロ環骨格の構造は,X線構造解析により確認し,ストレッチ効果を発現するナフタレン骨格が歪み湾曲していることが確認された.今後は,そのアゾ化合物の脱窒素反応を試み,長寿命一重項ジラジカルの発生を試みる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最終的な目標は,π単結合性を有する一重項ジラジカルの長寿命化とその光機能性を探査することにある.平成26年度までの研究で,一重項ジラジカルが,ラジカル部位に隣接する置換基の立体効果と隣接元素の電子的な効果により,長寿命化することを明らかにしてきた.平成26年度の研究で果敢に挑戦したマクロ環内へのアゾ官能基の導入に成功したことにより,ストレッチ効果を利用した一重項ジラジカルの長寿命化に対する新たなステージに入り,飛躍的な研究成果が期待される.
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今後の研究の推進方策 |
当該領域では,合成化学者のみならず,理論,物性評価,材料開発の専門家が集結している。本計画研究では,新しい結合様式π単結合に基づく新規物質群の創製を実施するが,これまでの研究で,炭素―炭素単結合が可視領域に光吸収を持つという既成概念では理解できない現象(=新たな創造の種)を見いだしている。未開拓な結合様式を持つπ単結合化合物の学理と応用を追求し新たな物質科学の創造へと展開するため,スピンダイナミクス研究の専門家である古川博士,A01,04班の理論化学者・中野博士,吉澤博士,A01班の分光学者・小倉博士,A03班の合成化学者・小澤博士,時任博士との共同研究および情報交換を綿密に行う。さらには,A01,02班の元素化学者,山本博士と関口博士との連携研究により,π単結合の一般化を図る。この本領域内でのみ可能な共同研究により,単独の研究では達成できない真に新たな物質群を創製する研究を推進する。
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