計画研究
局在化一重項ジラジカルは,結合のホモリシス過程に必ず介在する中間体であり,その構造と反応性に関する研究は化学反応を理解する上で極めて重要である.しかしながら,通常,局在化一重項ジラジカルは,極めて短寿命であり,その化学種を観測することすら難しいとされてきた.局在化一重項ジラジカルを直接観測することができるように長寿命化することができれば,結合のホモリシス過程が関与する化学反応をより深く理解することができ,その知見を有機合成反応の開発などに利用することができる.当研究室では,これまでに,局在化一重項ジラジカルの長寿命化を目指し,プロパン-1,3-ジイルジラジカルのスピン多重度制御を可能にする置換基効果と一重項ジラジカルの熱力学的な安定化の手法の開発を行い,室温で数マイクロ秒程度の寿命を持つジラジカルの発生に成功してきた.本研究では,局在化一重項ジラジカルの長寿命化に対する戦略として,新たに,環状マクロ環骨格を利用する速度論的な一重項ジラジカルの長寿命化に挑戦した.平成28年度は特に,平面π分子骨格を導入した20員環の構造をもつ1重項ジラジカルの発生を試みた.その結果,室温で200ミリ秒程度の極めて長寿命な一重項ジラジカルの発生に成功した.その寿命は,マクロ環がない一重項ジラジカルに比べて六桁も寿命が長い.本研究で発見された一重項ジラジカルの長寿命化に及ぼすマクロ環の効果は,一重項ジラジカルの長寿命化のみならず,他の反応性中間体(オキシアリル,トリメチレンメタン,など)にも展開できる成果であり,反応化学の分野での貢献度和は決めて高い.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 9件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件)
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