研究実績の概要 |
1. 昨年度,PNPピンサー型ホスファアルケン配位子Eind2-BPEPを有する四配位白金(0)錯体[Pt(L)(Eind2-BPEP)](1, L = PPh3)が形式d10錯体としては特異な平面四角形構造を有することを見出し,この構造特異性の要因が相対論効果に基づく白金の顕著なs-d混成にあることを示した.錯体(1)の構造特異性は31P NMRデータ(105.6 ppm)にも反映され,ホスファアルケン錯体としては異常な高磁場シフトが観測された.本年度は,種々の配位子Lを有する錯体を合成し,化学シフトと錯体構造に及ぼすLの効果を調べた.その結果,高磁場シフトはL = CO (127.3) < tBuNC (110.5) < PMe3 (101.2) < py (97.2) < DMAP (95.1)の順に大きくなることが分かった.配位子上の置換基による立体的影響を最小化したモデル錯体[Pt(L)(H2-BPEP)]を用いてDFT計算を行った結果,CO < PH3 < pyの順,すなわち31P NMRシグナルの高磁場シフトが大きくなる順に,錯体の平面構造が安定化する傾向が認められた.合成された全ての錯体は近赤外領域に強いπ-π*遷移を示し,錯体の平面性が高くなるほど吸収極大は長波長シフトした(nm):L = CO (776) < tBuNC (825) < PMe3 (845) < DMAP (924).吸収端波長から見積もられたHOMO-LUMOギャップは1.4~1.2 eVであり,極めて小さかった. 2. ホスファアルケンの立体保護基(Ar)がEind基とMes*基である[Cu(BPEP)]X錯体(X = OTF, PF6)を用いて,錯体の構造と配位平衡に及ぼすAr基の影響を調べた. 3. PNPピンサー型ホスファアルケン錯体の構造と機能について総合論文にまとめた.
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