研究実績の概要 |
1.アニオン性シリレン錯体とアルキンとの[2+2]環化付加反応:カルベン錯体を用いたアルキンの[2+2]環付加反応は、有機合成反応の中でも重要なメタセシス反応を構築する素反応である。この反応のケイ素版と言える反応が、最近、合成に成功したアニオン性のシリレン錯体を用いることにより高収率で進行することを見出した。類縁の中性シリレン錯体では進行しなかった反応である。 2.タングステン―ケイ素三重結合錯体によるメタセシス的な分子変換反応の開発:近畿大学の松尾研(A01班)との共同研究により合成した嵩高いアリール置換基を持つシリリン錯体の反応性の研究を推進し,アルデヒドを反応基質に用いると,2分子の基質を取り込みアルデヒド水素の分子内転移反応を伴い [2+2]環化付加生成物が高収率で得られることを見出した。興味深いことに、この環化付加生成物は、加熱によりカルビン錯体と“シラン酸エステル”に熱分解した。後者は二量化して1,3-ジシロキサンとして単離されるが、異なるアルデヒド存在下に熱分解を行っても“シラン酸エステル“の補足生成物が高収率で得られることから、その生成が証明された。この反応では、[2+2]環化付加生成物の金属―ケイ素二重結合と炭素―酸素二重結合の切断が起こり、新たに金属―炭素三重結合およびケイ素―酸素二重結合が生成するため、全体としてメタセシス的な反応と言える。ケイ素を含むメタセシス反応は前例がなく非常に重要な反応を見出したと言える。 3.ロジウムのカチオン性水素架橋ビス(シリレン)錯体の生成と有機分子との反応:カチオン性の水素架橋ビス(シリレン)ロジウム錯体をin situで発生させる方法を確立し、この錯体が様々な有機分子を補足した生成物を定量的に生成することを明らかにした。以前に合成したタングステンやルテニウムおよび鉄の錯体に比べても高活性であることが明らかになった。
|