研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
24109013
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 高周期典型元素 / 低配位化学種 / 触媒 / 立体保護 / キレート配位子 |
研究概要 |
本研究課題では、分子活性化触媒を指向した低配位14族元素低配位化合物や低配位15族元素配位子の設計・合成およびその性質、反応性解明を行うことを目的としている。特に本年度は、特異な電子状態を有する高周期15族元素配位子の開発を行った。NacNac配位子に代表されるN,N'-キレート型で配位する一価配位子が様々な触媒反応を効率よく進行させるということで、触媒化学に於いて盛んに活用されている。一方、遷移金属配位子として、N置換配位子に替えて、極端にπ受容性の高い低配位リン置換配位子が活用され注目を集めている。そこで本年度は、これまでに例のない、一価ホスフィドと低配位リン(C=P)部位で二座配位する新規P,P'-キレート型配位子の開発を行った。実際Mes*=2,4,6-tri-t-butylphenyl基の保護効果を利用し、対応するP,P'-キレート型一価配位子の合成に成功し、そのロジウムカルボニル錯体の合成に成功した。この新規配位しのカルボニルに対するトランス影響がかなり大きいことを見出し、また、ロジウムカルボニル錯体そのものがヒドロシリル化反応を促進する触媒となることを見出した。今後、他の遷移金属錯体への誘導や各種触媒反応への適用可能性を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、典型元素を中心とした新規な小分子活性化触媒の開発を目的としている。初年度に、目的とする小分子活性化のトリガーとなりうる低配位14族元素低配位化合物の分子設計を詳細に考察し、目的と定めたカチオン性低配位スズ化合物の前駆体として、対応する低配位スズハロゲン体の合成に成功した。この前駆体そのものも、ハロゲンの性質を反映したユニークな性質を示すことを見出しており、現在も研究が進んでいる。本年度は、新規配位子としての展開を視野に入れ、新しいP,P-キレート型配位子の開発にも成功している。研究は実際の触媒反応を検討する段階に入り、次年度からの研究推進の基礎となる十分な知見を得ることが出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
合成に成功した、ハロゲン体NHC→Sn(X)N(SiMe3)2, X = F, Cl, Br、のうち、特にX=Fの系では、対応するカチオン種NHC→Sn(+)N(SiMe3)2との平衡過程にあることが示唆されているめ、この平衡の存在を明確化する。さらには脱ハロゲン化反応を進行させ、対アニオンとしてOTf-やNTf2-を有するカチオン性二価化学種の発生を検討する。また、ケイ素の系でも同様の検討から、カチオン性NHC-シリレン錯体の合成を達成している。これらの系に於いて、触媒系の鍵となる活性種を発生させ、そのH-HおよびCO2活性化反応を精査する。また、本年度開発に成功したP,P'-キレート型一価配位子については、種々の遷移金属錯体の合成を行い、それぞれ様々な触媒反応への適用性を検討する。
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