計画研究
新学術領域「感応性化学種が拓く新物質科学」のA04班の計画班長として本研究に参画し、酵素触媒反応種の状態変化と活性制御に関する理論的研究を推進した。酵素触媒反応の原動力となる金属活性種の構造と反応性について探索するため、実験研究者との共同研究体制の下に量子化学計算および分子力学計算による理論研究を展開した。理論計算化学は、実験的に観測困難な化学種の構造、反応、物性の研究に極めて有効な手段であり、最近の最先端研究における理論計算の役割は極めて重要である。本研究では理論計算化学の立場から、高周期典型元素と遷移元素を活性中心にもつ酵素反応系を対象として、実在系に生成する感応性化学種の発見に努めた。また、大規模量子化学計算を用いて活性中心の周辺環境や反応過程に応じて状態を変化させる感応性化学種の発見と、それらが受ける摂動メカニズムの解明に寄与した。本研究では、とくに金属酵素と関連するモデル錯体について、酸化反応などの生体模倣反応の機構について理論的研究を行った。密度汎関数法やQM/MM法により現実系の大規模計算を行い、酵素触媒反応種の構造と分光学的研究を行った。反応過程で生成する中間体のスピン状態変化およびタンパク質中での電子移動が、金属の関与する酵素触媒反応を理解するための鍵となることを明らかにした。実験による不安定活性種の観測は困難なため、量子化学計算は有効な研究手段となる。平成27年~28年には27報の原著論文を報告した。その内、複数のグループとの領域内共同研究は14報の論文として発表され、領域内共同研究の推進にとくに貢献した。
1: 当初の計画以上に進展している
領域内外の実験研究者と金属酵素と関連するモデル錯体について、生体模倣反応の機構について理論研究の立場から共同研究を行った。密度汎関数法により現実系の大規模計算を行い、酵素触媒反応種の構造と反応性及び分光学的研究を行った。平成27年~28年には27報の原著論文を報告した。その内、領域内共同研究は14報であり、領域内共同研究の推進にとくに貢献した。理論と実験のインタープレイによって、とくに複雑な酵素触媒反応の機構解明に資する研究が達成できた。
金属酵素や関連する人工触媒で働く金属活性種は、電子の授受やスピン状態の変化により全く異なる反応性を示す“感応性化学種”である。とくに、反応過程で起こる異なるスピン状態間のスピンクロスオーバーは、鉄や銅などの遷移金属の関与する生体触媒反応において必須の現象である。メタン酸化酵素の解析をヒントに、金属置換ゼオライト(主に鉄と銅の置換型を考える)によるメタン酸化触媒ついての研究も開始する。理論計算化学は、実験的に観測困難な化学種の構造、反応、物性の研究に極めて有効な手段であり、最近の最先端研究における理論計算の役割は極めて重要である。まず、QM計算を実行し、ゼオライトのルイス酸点、細孔の影響を考慮するためのQM/MM計算を実行する。理論化学の立場から領域内外の共同研究の推進にとくに貢献する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (28件) (うち査読あり 28件、 謝辞記載あり 28件、 オープンアクセス 18件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 5件、 招待講演 10件) 備考 (1件)
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