研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
24109015
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉本 秀樹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00315970)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 金属錯体 / モデル錯体 / 金属触媒 / モリブデン / タングステン / オスミウム |
研究概要 |
モリブデン水酸化酵素のモデルとして、スルフィド基やセレニド基を持つモリブデン(IV)錯体を合成し、末端配位子の効果を系統的に議論した。結晶構造解析や紫外可視分光計や共鳴ラマン分光計などを用いた分光学的性質などのシュミュレーションからモリブデン錯体の電子構造解析をおこなった。この結果、末端配位子がオキソからスルフィド、セレニドへと変化するにつれて、LUMO+3のエネルギー順が下がり、LUMO+2の軌道とエネルギー順位が入れ替わることが明らかとなった。電荷遷移もこの順で長波長側に観測されることと一致した。 スルフィド基やセレニド基を持つモリブデン(VI)錯体も合成し、NMRや紫外可視スペクトルなどの分光学的性質における末端配位子の効果を系統的に議論した。DFT計算により、それらの三次元構造も求めて、末端配位基との結合長についても考察を加えた。三級リンに対する原子移動を速度論的に解析した結果、末端配位子が酸素→硫黄→セレンになるにつれて反応速度が飛躍的に増加することを明らかとした。タングステン類似対も合成してその分光学的性質や原子移動能を評価し、モリブデン錯体の方がより高活性であることを見出した。 オスミウム(VI)錯体を合成し、これを触媒とするアルケンのジオール化反応を入手容易な過酸化水素を酸化剤としておこなった。末端アルケンから内部アルケンまでのジオール化反応が効率よく進行した。また、電子求引基を持つアルケンから電子供与基を持つアルケンまで幅広い基質に適用できた。使用するキレート配位子により安定度が増した錯体では、触媒の耐久性が向上しより高い触媒回転数を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モリブデンやタングステンを含む酵素の反応中心モデルに関する研究は当初の予定通りすすんでいる。これに加えて、鉄酵素中心モデルを範とした触媒開発の研究では、容易に入手でき、かつ原子効率の高い過酸化水素を酸化剤とする系が構築できつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
モリブデン酵素モデルに関しては、硝酸還元酵素やエチルベンゼン酸化酵素の活性中心モデルを合成する。 オスミウム触媒によるアルケンのジオール化反応について、一層の高機能化を図る。天然物・医薬品・ファインケミカルには不斉中心を持つ化合物が多く含まれていることが考慮し、錯体に不斉中心などを導入して、キラル触媒を合成する。不斉ジオール化が上手く進行した錯体では、実際の医薬品の中間体合成などに用いる。同族元素であるルテニウムを用いてオスミウム錯体と等構造をとる化合物を合成し、ジオール化反応などを試みる。
|