研究実績の概要 |
1,5-ジアザシクロオクタン骨格に2-ピリジルエチル基を導入した配位子を持つ単核銅(II)エンドオン型スーパーオキソ錯体の反応性について検討した。低温、アセトン溶液中でTEMPOH (4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethyl-piperidine)を加えると、基質からスーパーオキソ錯体への水素原子移動反応が進行し、単核銅(II)-ヒドロペルオキシド錯体が生成した。同条件下でフェノール誘導体を加えると、単核銅(II)フェノレート錯体が生成した。また、反応系中から過酸化水素が約50%の収率で得られたことから、本反応はプロトン移動反応を律速段階として進行していることが示唆された。また、フェロセン誘導体などとの反応により、スーパーオキソ錯体の一電子還元電位を見積もるとともに、ペルオキソ錯体を生成させた。 配位原子を酸素、硫黄、セレンと系統的に変えた等構造をとるジオキソ-、オキソ-スルフィド-、オキソ-セレニド-モリブデン(VI)錯体を合成した。オキソースルフィド錯体およびオキソ-セレニド錯体は三級リンへの選択的な硫黄あるいはセレン原子移動反応を示した。原子移動速度はSe > S >> Oの順で速くなり、酸素とセレンの原子移動では10000倍違っていた。スルフィドやセレニド基を持つ錯体のLUMOの成分には硫黄とセレンの寄与がそれぞれ34%、35%程度含まれるのに対し、ジオキソ錯体では9%しか酸素は寄与せず、このことが原子移動反応性を支配していると結論した。 すでに合成に成功したアルケンのシスジオール化を触媒するオスミウム錯体をに用いると、脂肪族アルケンから電子求引基含有アルケンまで様々なアルケンに対して選択的なシスアミノアルコール化が進行した。各種分光学的手法や計算化学から、この反応における活性酸化剤はオスミウム(V)―オキソ-アミナト錯体であると結論した。
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