研究実績の概要 |
モリブデン酵素活性中心生成のモデル化をおこなった。ジオキソモリブデン(VI)状態の補因子モデルとして、カルボン酸メチルエステルを置換基に持つジチオレン錯体を用いた。メタノールやベンジルアルコールなどの単純なアルコールをアポ酵素モデルとして、Camphorsulfonic acid存在下、-40℃で補因子モデルと反応させるとアルコラトと一つのオキソ基が置換したオキソアルコラトモリブデン(VI)活性中心モデル錯体が生成した。生成したモリブデン錯体は紫外可視、マススペクトルによって同定した。エタノラトが配位した錯体については、低温下での結晶化に成功し結晶構造を決定した。活性中心モデル錯体は540 nm付近に2000 M-1 cm-1以上のモル吸光係数を持つ強い吸収帯をもつが、配位アルコラトによって吸収位置は大きく変化しなかった。ヘキサンチオールをアポ酵素モデルとして用いた時には、-60℃以下でアルコールとの反応と同様にオキソ基との置換がおこり、オキソ(ヘキサンチオラト)モリブデン(VI)錯体が生成した。この錯体は639 nmに強い吸収帯を持ち、アルコラト錯体の吸収帯よりも大きく長波長シフトしていた。これらの構造をDFT計算により最適化してモデル錯体の電子状態を明らかにし、これらの吸収はHOMO-1からLUMOへの電荷遷移に帰属した。 すでに合成に成功したアルケンのシスジオール化を触媒するオスミウム置換鉄酵素モデル錯体を用いると、過酸化水素を酸化剤としてさまざまな1,5-ジエンの酸化的環化反応が進行し、シス配置のテトラヒドロフラン環が生成した。環化反応における基質依存性や五価オスミウム酸化活性種と1,5-ジエンとの量論反応を分光学的に追跡することにより、反応機構を推定した。
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