計画研究
テルピリジンとフェニルピリジンを用いて1つの置換活性部位を有する新規な有機金属オスミウム(III)錯体を合成し、アルケンのジオール化反応について検討した。シクロヘキセン、スチレン、ケイ皮酸メチルはシス選択的にジオール化された。またpH 4において、1-オクテンとtrans-3-オクテンでは1-オクテンの方がより効率良くにジオール化されたのに対し、pH 8ではtrans-3-オクテンの方が1-オクテンより効率的にジオール化された。このことから本反応における位置選択性はpH依存的であることが示された。アミンを窒素源とするジアミノ化反応を開発するため、N4系四座配位子のオスミウム(III)-ジトリフラート錯体とアミンとの反応について検討した。オスミウム(III)-ジトリフラート錯体とシクロヘキシルアミンとの反応では、可視領域に強い吸収(λ= 465, 585 nm)が現れ、ESI-MSにより、トリフラート配位子の一つがシクロヘキシルアミンと置換したモノアミン付加体であることが確認された。配位不飽和な錯体として、フェノラートとβ-ジケチミネートを組み合わせた酸化還元活性なトリアニオン性四座配位子とハロゲン化物イオンを有する5配位ロジウム(III) 錯体を合成した。錯体は1H NMRやX線結晶構造解析などの分光学的手法によって同定した。酸化還元電位などの性質が溶媒の極性の違いによって影響を受け、溶媒と中心金属との相互作用があることが示唆された。さらに、以前合成した6配位ロジウム(III)錯体の場合に比べて、この錯体はC-H結合のアミノ化反応や酸素化反応により高い活性を示すことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画では、「感応性金属酵素中心モデルの構築と機能発現」と題して、酵素触媒サイクル中に存在する準安定化学種を感応性化学種として積極的にとらえることを目的としている。すなわち、感応性モデル錯体を合成し、外部刺激応答性を調べ、機能発現(特に、化学的反応性)まで展開する。人工金属酵素の開発では、鎖状型四座配位子を用いてrieske dioxygenase不安定化学種のモデル錯体を合成し、その配位子が与える幾何構造の違いにより、アルケンのジオール化活性を制御することに成功した。酵素に見られるような異なる電子状態を有する金属-オキソ結合を2つ持つ金属錯体の合成にも成功し、配位子交換反応が著しく早くなることを見出した。さらに、人工金属酵素モデルのアルケンのジアミノ化触媒への展開を目的として、金属への種々のアミンの配位を検討し、速度論的知見により、第一級アミンがアミン源として適していると結論した。ヘム鉄含有酸化酵素の知見に基づき、配位子の酸化還元能を酸化触媒サイクルに取り入れることに成功し、単結合性のロジウム-ナイトレン酸化活性種を作り出し、C-H結合のアミノ化反応に成功した。以上の結果は、本課題の人工金属酵素のモデルによる機能発現に一致する。
不活性炭化水素を水酸化する鉄含有メタンモノオキシゲナーゼやマンガンー鉄含有酵素中心の感応性活性種モデル構築をおこなう。酵素反応中心構造では、2つの金属は異なる電子状態をとっているため、異種金属複核錯体を合成し、触媒分子の分極性を上げる。さらに、四面体構造をとる金属酸化物に単座配位子を導入して対称性を低下させることにより、水酸化反応性が向上した分子を合成する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 図書 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Journal of the American Chemical Society
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