オスミウム(III)テルピリジンートリクロロ錯体とフェニルピリジンとの反応からベンゼン環のオルト位の炭素がオスミウムに結合した有機金属錯体が得られた。この錯体を三級アミンオキシド、過酸化水素や過酸によって酸化すると、金属に結合した炭素が水酸本反応は炭化水素の活性化と金属-炭素結合への酸素挿入反応からなっている。三級アミンオキシドとの反応を紫外可視分光法によって速度論的に解析した。その結果、アミンオキシドがオスミウム(III)中心に結合した付加体との平衡反応とその後のカルボアニオンによる酸化剤の酸素原子への求核反応によって反応機構がなることがわかった。反応のDFT計算から、アミンオキシド付加錯体はオキソオスミウム(V)錯体へと変化し、そのオキソ基への求核反応によってC-O結合が生成することを明らかとした。 オスミウム(III)-ジトリフラート錯体を触媒とするクロラミンTによるアルケンのアミノアルコール化反応の研究では、鎖状四座配位子を持つ錯体で酸化活性種の単結晶化に成功しその構造を決定した。酸化活性種は一つのオキソ基と一つの脱プロトン化したアミノ基を有するオスミウム(V)錯体であった。この錯体とアルケンとの反応からアミノアルコールが生じたため、実験的にも本錯体がアミノアルコール化反応における酸化活性種であることを証明した。 四酸化オスミウムに種々の陰イオンを配位させた5配位錯体を合成した。その構造は用いた陰イオンの塩基性度が大きくなるほど三方両錐構造に近くなっていた。また、四酸化オスミウムと5配位構造の錯体とは平衡状態にあり、その平衡定数は陰イオンの塩基性度の増加に伴い大きくなった。さらに、アルカンの酸化反応においては、三方両錐構造に近いアニオン付加錯体のほうが高い酸化活性をしめし、その順序はオスミウム(VIII) / (VII)の酸化還元電位の大きさとは逆になった。
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