研究領域 | 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究 |
研究課題/領域番号 |
24110002
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
中島 映至 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門地球観測研究センター, センター長 (60124608)
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研究分担者 |
梶野 瑞王 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 研究官 (00447939)
滝川 雅之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 主任技術研究員 (30360754)
山澤 弘実 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70345916)
五藤 大輔 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 研究員 (80585068)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 福島第一原子力発電所事故 / 放射能汚染 / 放射性核種 / エアロゾル / 大気物質輸送モデリング |
研究実績の概要 |
A04-8・A01-2班と協力して、β線吸収法SPM測定網の試料テープやNaI (TI) スペクトルデータ等の発掘を行い、99地点のSPMデータを解析した。これまで空白地域であった、原発から銚子に至る沿岸域でのデータ解析の準備も行った。放射性ヨウ素IとセシウムCsの同位体比を決定することにより、事故当時の131Iの大気濃度推定手法も開発し、同位体比がプリューム毎に異なることもわかった。 WRFとNICAMのモデルアンサンブル平均場を放射性Csの大気濃度・気象場の観測と比較し、顕著な9つのプリュームの詳細な形成メカニズムを把握し、排出シナリオ・沈着過程・鉛直大気場・気象場のモデル不確実性に起因する度合いが事例毎に異なることが明らかになった。気象場と流跡線解析により、3/21に関東平野に流入したプリュームは200m以下の非常に低い高度を経由したことが示され、モデルの鉛直場再現性が重要とわかった。また排出シナリオの修正案も示した。さらに第2回国際モデル比較実験の実施を決定し、国内外12機関の参加表明を得た。 環境に沈着した放射性Csの長期変動を把握するために、大気を通した再飛散の調査をA01-2・A03班と協力して行い、2013年に浪江等で観測された放射性Cs大気濃度は、寒候期には土壌粒子の再飛散で説明できた。しかし、暖候期は1 mBq m-3程度の高濃度が観測され、モデルの植生由来の再飛散係数を観測値よりも10倍大きく設定する必要があり、発生過程に関する更なる調査が必要となった。 以上の結果をデータベースに集約し公開した。また、第3回若手研究者のためのモデル講習会の実施を決定した。原子力規制委員会による原子力防災対策指針の改正により、SPEEDIの利用規定が削除された問題では、日本気象学会の放射性物質拡散ワーキンググループの検討に参加し、規制委員会へのレターを含めた提言策定に貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた、大気拡散モデルによる観測データの解析が順調に実施されている。観測値との差が大きい場合に関しては、その原因を同定することができるようになった。また、より良い排出シナリオ構築のための道筋を確立した。データ発掘と解析も順調に進んでおり、特にデータ空白域を埋めることができるようになった。出版も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
次の5つの課題推進を中心に行う予定である。 ① SPMデータ、NaI (TI) スペクトルデータ等の解析結果を整備する。特に、これまで空白地域であった、原発から銚子に至る沿岸域でのデータ解析を行う。② 本研究で確立した推定法により、事故当時の放射性ヨウ素-131の大気濃度の推定を行う。③ これまで得たモデルの問題点を基に改良したモデルによって、事故当時に放射性物質の輸送過程に関するモデル確定値を出す。④ 第2回の国際モデル比較実験を実施し、その結果を取りまとめて、発表する。⑤ 大気を通した再飛散過程について、土壌粒子と植生および森林火災由来による寄与を把握する。それに基づいて、環境に沈着した放射性物質の長期変動における再飛散過程の大きさを示す。 本研究で得られた科学的知見とデータについて、出版し、次世代に役立てる努力を行う。そのために、データベースを整備し、市民に公開する。また、第3回の若手研究者のためのモデル講習会を2016年8月25-26日に実施する。防災対策指針や避難経路策定に関するモデル利用のあり方の考え方をまとめる。
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備考 |
・JRR Award at ICRR 2015 by Tsuruta, H., Y. Oura, M. Ebihara, T. Ohara, and T. Nakajima ・日本未来館のパネル展示「5年前、そして5年間に起きたこと」へのデータ提供(滝川雅之)
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