計画研究
1)大気試料の組織的捕集と放射能分析:福島県浪江町の高線量率地域にて大気浮遊塵、降水サンプラーで観測を継続。分析は気象研、東工大で実施。さらにA04-8班の大阪大と連携し、H27年度802試料を分析。津島地区での大気中Cs濃度は都市と異なり、夏季に高いことが明確になった。2)一次放出の解明:A03-5班の筑波大や公募班の東京理科大と連携し、浪江地区の表土などから不溶性高比放射能Cs粒子を抽出、SEM-EDS等で性状解明を進めた。土壌からの粒子は、つくば市の大気試料から得たCs粒子と同様の組成・性状をもち、Cs粒子がより広範に分布することを証明した。3)二次放出の解明:汚染直後の放射性Csの再飛散率として、10-6~10-5/hを得た。津島地区の試料を用い、SEMでの分析と水抽出により大気中Csの性状把握に努めた。夏季にはバイオエアロゾルが多く、水抽出率も高い。Csを濃縮する真菌類胞子も多く含まれ、バイオエアロゾルが夏季の大気中Csを支える実体として浮かびあがった。A03-6班と連携し、金沢大の専門家の協力を仰ぎ予備的な観測を実施したところ、津島地区の夏季大気で5-8×105個/m3という高濃度のバイオエアロゾルの存在が明らかとなった。DNA解析も実施中。4)大気モデルの精度向上・再飛散モデル化:表土粒子飛散メカニズムを組み込んだ1D放射能飛砂モデルを構築し、論文出版。A01-1班と協力し、領域モデルに二次放出スキームとしてこの飛砂モジュールと新規の森林放出スキームを組み込み。冬季の大気中Cs濃度は飛砂で説明できるが、夏季のひと桁程度大きなCs濃度は説明できず、植生活性をグリーンフラクションで代表し地表面汚染に対して10-7/hの放出率(割合)を与えると、観測値再現が達成できた。二次放出源として、夏季の森林生態からのバイオエアロゾルを考慮すべきことがモデルからも示された。
2: おおむね順調に進展している
1)試料組織的収集・放射能分析、2)一次放出、3)二次放出、4)大気モデルの精度向上・再飛散過程モデル化の各副課題について、観測・解析が全体として順調に進捗した。特に1)について、二次放出された放射性Cs大気中濃度変動とその発生源に関し重要な成果が得られ、大きな進展があった。すなわち、一旦地表面に沈着した放射性核種が再度大気中に放出される過程については、季節変動があって、暖候期と寒候期とで発生源が変わるらしいこと、従来想定された①表土飛散に加えて、森林生態系からの②バイオエアロゾルの発生という全く想定されなかった発生源が存在することが分かった。関連する報告の国際会議での発表が予定され、論文化も進行中である。
H27年度は、福島原発事故直後の二次放出および数年経過後の二次放出解明につき、大きな成果を得た。このことを背景に、昨年度に引き続き、1)試料組織的収集・放射能分析、2)一次放出、3)二次放出、4)大気モデルの精度向上・再飛散過程モデル化の4つの副課題に取り組み、最終年度であることから取りまとめを行う。特に、二次放出に関しA01-1班と協力し、表土粒子および森林生態系からの発生について、領域輸送モデルへの組み込みを進め、放出量の評価を行う。森林生態系からのバイオエアロゾル放出に関しA03-6班と連携を深め、放出主体(真菌類なのか、他の生物種なのか)の解明を行う。また、森林火災が福島県で続いていることから、森林火災の影響についても予備的な評価を行う。より効率的な研究進捗と取りまとめを図るため、年度内複数回の班会議を開催し、特に不明点が依然として残る二次放出に関する研究成果の整理等を随時行う。さらに、2016日本惑星科学連合大会、Goldschmidt国際会議など国内で開催される国際会議、その他の国内各学会への参加・発表を促進する。また若手育成と連携した論文執筆合宿を組織して、論文発表を強く推進し、研究のとりまとめ強化を図る。また、本新学術領域研究全体に関わる出版事業に参画して、広く国民へ成果を公開することに努めていく。なお、毎回の班会議には他研究班からの参加を必ず要請し実現しており、公募班との連携も取りまとめにむけ、さらに深まるように努力する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 4件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 12件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (41件) (うち国際学会 18件、 招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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