計画研究
水・土砂移動に伴う放射性物質の移行過程の理解のために,昨年度までに開始した観測、調査、解析を継続的に行った。具体的には、下記の項目である。1. 放射性核種の環境への移行のモデル化 2. 地下水、湧水への移行状況調査 3. 河川における放射性核種の移行調査 4. 放射性核種の河川・海洋への流出モデル 5. 河川・湖沼調査 6. 129I, 36Clの環境トレーサーとしての活用このうち、1)については昨年度まで観測結果を継続するとともに、土壌侵食モデルによる福島第一原発80km圏内における放射性セシウムの分布推定・予測を提示した。2)については、汚染度の異なる地域にある森林小流域での観測を継続し、地点間比較に供するデータ群を取得した。3)、4)について、新田川における放射性セシウムフラックス観測を開始し、同流域内のダムにおける放射性セシウム収支の観測およびモデル化に着手した。5)について、河川における観測を継続した。また、汚染度の異なる複数の湖沼(赤沼・霞ヶ浦など)での底泥採取・分析を行い、放射性物質の分布や水域内での収支の定量化を進めた。また河川・湖沼における魚類への放射性セシウムの蓄積量の調査を行った。6)について、微量核種の分布調査により、事故直後の放射性物質の拡散の推定に資する知見を得た。また3)に関連して、放射性ヨウ素の新田川流域内での分布、新田川河口における魚類への蓄積量に関する調査を行った。さらに土砂移動に伴う移行の物理的モデルの開発、都市域における移行調査、湖沼の堆積物等の化学的分析といった公募研究を設定し、放射性物質移行量およびプロセスの解明を促進した。
2: おおむね順調に進展している
「9. 研究実績の概要」に示した6課題のうち、すべての項目について順調に観測が進展しており、今年度は新田川流域における総合的な移行調査プログラムが開始されるなど、観測が拡大している。昨年度までに行われた水田、森林などさまざまな土地利用における観測結果に基づき、海外研究機関との連携を含めて、学術論文が出版に至っており、相当数出版されている。
計画研究としての目的は概ね達成できており、今後は領域内の他計画研究班との連携研究推進により、新たな学術領域の創出に向けて研究を進展させていく。主な研究を下記に示す。1.放射性核種の環境への移行のモデル化:様々な土地利用されている侵食プロットにおいて、水・土砂および放射性セシウム流出の観測を継続し、観測結果をもとにUSLEモデルに必要なパラメータを算出し、事故後30年後の福島第一原発80km圏内における137Cs存在量空間分布の将来予測およびその高精度化を図る。2.地下水、湧水への移行状況調査:高沈着量地域及び中沈着量地域において、森林流域からの放射性セシウム流出に関する観測を継続し、水系を通じた放射性核種の流出に関する時間変化傾向を確認する。3.河川における放射性核種の移行調査:阿武隈川及び浜通りの2級河川を対象として、河川水中の放射性セシウムの濃度の観測を継続し、河川を通じた放射性セシウム移行フラックスを定量的に把握する。4.放射性核種の河川・海洋への流出モデル:新田川流域をモデル流域として、氾濫原堆積物の採集・分析、ダムにおける放射性物質の収支計算(Golosov)、環境試料の微量放射性物析、精密DEMデータを用いた流域全体から土砂移動にともなう移行のモデル化(LSCE:Evrard:フランスNERとの協働)を行い、放射性核種流出に関する流域の連結性を定量的に評価する。5.河川・湖沼調査:阿武隈川本流黒岩における放射性セシウムの流出量の観測を継続し、溶存態・有機物態の137Cs流出量を把握するとともに、河川水系における藻類・バクテリアなど生物を介した移行プロセスを解明する。湖沼に関して、霞ヶ浦(浅い湖沼)と深い湖沼における多地点・経年調査を継続し、湖沼における蓄積プロセスを明らかにする。また、中長期的な底質-魚介分配比の安定性解析を継続する。これらの観測結果をもとに湖沼における放射性Cs収支観測の継続及び粒径情報を組み込んだモデルの作成を行う。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (33件) (うち査読あり 33件、 オープンアクセス 33件) 学会発表 (46件) (うち招待講演 7件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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