研究領域 | 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究 |
研究課題/領域番号 |
24110009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
篠原 厚 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60183050)
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研究分担者 |
齊藤 敬 尚絅学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00343616)
上杉 正樹 金沢大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (00622094)
小島 貞男 愛知医科大学, 医学部, 教授 (20126858)
村松 久和 信州大学, 教育学部, 教授 (40157798)
沖 雄一 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (40204094)
大槻 勤 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (50233193)
横山 明彦 金沢大学, 物質化学系, 教授 (80230655)
大浦 泰嗣 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90291567)
吉村 崇 大阪大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90323336)
二宮 和彦 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90512905)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 環境放射能 / 環境放射能動態 / 放射線計測 / 地球化学 / 大気化学 / 化学分離 / 放射化学 / 放出模擬実験 |
研究実績の概要 |
H27年度は、実施計画通り(1)3Dプリンターを用いた新規の標準試料作成法の開発、(2)環境試料からの放射性Sr分離法とその手法の開発、(3)燃料模擬体の加熱実験をベースとした原子炉内を模擬した放射性物質の放出実験の基礎研究、(4)放出された放射性核種のエアロゾルへの輸送プロセスの研究、(5)大気試料を中心とする放射性Csの継続的な計測、の5つのテーマで研究を推進した。 (1)関しては順調な成果が得られ、すでに学術論文の投稿という形で研究のとりまとめを行った。(2)に関しても、大気中の放射性Sr-90の分析を昨年度よりも進め、順調な成果が得られている。なお、この研究に関連して当初は予定していなかったが、カウンター用のポンプシステムを急遽調達した。 (3)および(4)については、H27年度の計画において、もっとも注力した研究テーマである。まず(3)についてであるが、燃料模擬体の加熱実験を通して、事故当初に見られていた放射性Csを濃集した不溶性粒子、「Csボール」についてその再現実験を行った。結果300℃という実際の炉内環境でもありうる低温条件のもとで、その生成が可能であるということを実験的に示した。より高温条件についての実験も並行して進んでいる。(4)についてもH27年度は大きな成果が得られた。新規に調達したカリフォルニウム線源を用いて、放射性核種ごとにエアロゾルへの吸着のプロセスが異なることを、実験的に示した。これは事故当初の放射性核種の分布の再現をするにあたって重要な基礎データを与えるものである。 (5)の放射性Csの継続的な計測においては、Csの季節変動やその原因についての考察を進めている。汚染地域での山火事などのイベントについても、即応的に分析を進め報告している。 これらの研究成果は、今年度の15報の査読付き学術論文と、20件の学会発表で適宜公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度目的としていた実施計画については、すでに概要に述べたように順調な進展が見られた。特に予算の重点的な配分を行った、炉内環境、さらには炉内からの放出過程を扱った研究については、セシウム濃集の不溶性粒子の生成実験に成功するなど、当初予定していた以上に重要な知見を得ることができた。 本研究領域班の大きな目的である、環境試料のCsや他の微量元素に対する分析法の開発や、実際の分析についても順調な成果が得られている。長期にわたるCsの分析からは、Cs濃度の明瞭な季節変動が見られており、さらには晴天、降雨時や昼夜といった特定の条件での試料の分析などが進んでおり、降雨時に放射能が上昇するなど、これまで知られていなかった新たな知見が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はH27年度に特に進展のあった、炉内環境の模擬実験について、更なる研究の推進を行う。H27年度に調達したカリフォルニウム線源により、様々な放射性核種についての輸送過程を明らかにすることができるようになっており、放射性核種による輸送過程の違いについて系統的な研究を行う。 これに加えて、今年度は帰宅困難区域の除染事業も始まることから、未除染の土壌等の環境試料のサンプリングを行い、事故から5年経った現在での比較的長期の環境動態について明らかにする。 これら採取を行った試料は、事故初期の微量放射性核種の分布状況の研究のためにも使用する。これまで開発してきた微量元素分析法を用いて、放射性Csだけでなく、SrやPu, Amなどの微量な放射性核種についても、妨害元素を除いた上で分析を行う。
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