研究領域 | 免疫四次元空間ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
24111004
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高濱 洋介 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 教授 (20183858)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 免疫学 / 胸腺 / 胸腺上皮細胞 / ストローマ細胞 / Tリンパ球分化 / レパトア選択 |
研究実績の概要 |
胸腺は、獲得免疫システムの司令塔として自己と非自己の識別を担うTリンパ球を分化させるとともに、産生するTリンパ球の抗原認識特異性が自己生体に有用でしかも寛容であるように選択する。Tリンパ球の分化と選択を担う胸腺微小環境は主に皮質と髄質から構成されるが、それぞれを特徴づける皮質上皮細胞と髄質上皮細胞の分化と機能、またそれらを裏打ちする分子機構は未だ明確ではない。我々は皮質上皮細胞に特異的に発現され、CD8陽性キラーT細胞の正の選択に必要な胸腺プロテアソームとその構成鎖β5tを同定するとともに、髄質上皮細胞に高く発現されT細胞の自己寛容確立に必須のケモカインCCL21とサイトカイン受容体RANKを見出し、胸腺微小環境の機能を担う分子機構の解析に先鞭をつけている。そこで本研究では、これらの分子群に加えて胸腺微小環境の機能を特徴づける分子の同定と機能について、新たな胸腺ストローマ細胞分離精製の標準的手法の開発を基盤に解析を推進する。とりわけ、正の選択を担う分子機構解析を進め、負の選択に比較して十分に理解されていない「正の選択とは何か」について確固たる解を与えたい。また、すでに作製を進めているβ5t-CreノックインマウスやCCL21a-Tomatoノックインマウスなどを用いることで従来まったく明らかにされていない皮質上皮細胞と髄質上皮細胞の系譜分岐機構を解析する。とりわけ、皮質上皮細胞と髄質上皮細胞の分岐を担う転写制御機構の解明に向けて、各細胞の分化進行に伴って発現量の変動する転写因子の網羅的解析を進める。更に、髄質上皮細胞のもつ強力な自己寛容誘導能に注目し、その機能を体内で異所性に構築する技術の開発をめざす。これらの解析を進めることによって、自己免疫疾患で最大の難題というべき自己反応性T細胞の人為的除去法の基盤樹立にも寄与したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究を立ち上げるに際して、上皮細胞亜集団を含む胸腺ストローマ細胞集団を定量的かつ定性的に再現性高く分離精製する手法の確立を進めた。当該の手法を用いることで、胸腺ナース細胞がβ5t発現皮質上皮細胞の亜集団であり、幼若Tリンパ球の抗原受容体α鎖遺伝子の二次的再構成を支持することで、正の選択を至適化する細胞であることを明らかにするとともに、髄質上皮細胞がAire発現とCCL21発現を指標に少なくとも4つの異なる亜集団によって構成される多様性を有することを明らかにすることができた。また、これまでに明らかにしてきたβ5tやCCL21と同様に皮質上皮細胞や髄質上皮細胞あるいはそれらの亜集団に選択的に発現される分子を複数同定することができたので、これらの分子に関する機能解析を順調に開始するに至っている。また、作製を進めてきたβ5t-Creノックインマウスを用いることで、Aire陽性細胞を含むすべての髄質上皮細胞がβ5t陽性前駆細胞に由来することを明らかにすることができた。β5tが皮質上皮細胞に特異的に発現される分子であることをふまえ、得られた結果は、皮質上皮細胞と髄質上皮細胞の系譜分岐機構の理解に大いに貢献すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
皮質上皮細胞や髄質上皮細胞あるいはそれらの亜集団に選択的に発現される新規分子の機能解析を推進する。また、β5t-rtTAノックインマウスやCCL21a-Creノックインマウスの作製を進めることで、皮質上皮細胞と髄質上皮細胞の系譜分岐機構の解明を進める。更に、皮質上皮細胞と髄質上皮細胞の分化進行に伴って発現量の変動する転写因子の網羅的解析を進めることで、これら亜集団の分岐を担う転写制御機構の解明を目指す。加えて、髄質上皮細胞のもつ強力な自己寛容誘導能を体内で異所性に構築する技術の開発をめざすことによって、自己反応性T細胞の人為的除去法の基盤樹立を試みる。
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