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2013 年度 実績報告書

二次リンパ組織ストローマ細胞の性状と機能

計画研究

研究領域免疫四次元空間ダイナミクス
研究課題/領域番号 24111005
研究機関大阪大学

研究代表者

宮坂 昌之  大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (50064613)

研究分担者 片貝 智哉  関西医科大学, 医学部, 講師 (00324682)
梅本 英司  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90452440)
研究期間 (年度) 2012-06-28 – 2017-03-31
キーワード免疫学 / リンパ節 / ストローマ細胞 / リンパ球 / 樹状細胞
研究概要

われわれは既に、リンパ節への血行性のリンパ球トラフィキングがリンパ節高内皮細静脈(HEV)に発現するリゾホスホリパーゼautotaxin (ATX)とその産物のリゾリン脂質・リゾホスファチジン酸(LPA)により制御されることを明らかにしている。今回、分担研究者の梅本、片貝らとともにノックアウトマウスを用いた解析を行い、この現象においてリンパ球上ではLPA2、HEV内皮細胞上ではLPA4, LPA6がLPAシグナリングを受ける主な責任受容体であることが明らかになった。
LPA4, LPA6を介したシグナルは、ともにRhoを活性化し、内皮細胞の運動性を亢進させ、リンパ球のtransmigrationを亢進する。また、リンパ球、樹状細胞が流入するリンパ節の被膜下洞にもATXが発現し、特に辺縁洞直下の2種類のストローマ細胞、すなわち、辺縁細網細胞と線維細網細胞に強い発現が見られ、分担研究者の片貝による解析から、T細胞の線維細網細胞を介した間質内移動はATX/LPA依存的に促進されることが明らかになった。
これらのことは、リンパ節内の特定のストローマ細胞が産生するATXが、LPA産生を介してリンパ球の血行性、リンパ行性動態の両者を制御し、リンパ節への流入、間質内での移動の両方を制御することを示す。ストローマ細胞は、これまで特定のサイトカインやケモカインを産生しリンパ球動態を制御すると考えられてきたが、LPAという特定の生理活性リン脂質を産生することによりパラクライン、オートクライン的にリンパ球動態を制御するという新しい分子機構の存在が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

生体内のもっとも重要な二次リンパ組織でのリンパ球の動態が特定のストローマ細胞により制御され、ストローマ細胞が産生する生理活性リン脂質LPAとLPA受容体を介した特定のシグナル経路がその制御機構の主体であることが明らかになってきた。これは免疫細胞動態制御機構に関する新しいパラダイムの存在を示唆する。これまで、リンパ球がリンパ節を離れる際にはリンパ管内皮細胞が産生する生理活性リン脂質S1P (sphingosine-1-phosphate)がリンパ球のstop-goを制御すると考えられてきたが、S1Pとは異なるストローマ細胞により産生されるLPAも強いリンパ球動態制御能を持つことから、(1)二次リンパ組織を構成する複数のストローマ細胞サブセットがリンパ球動態を制御すること、(2)それぞれのサブセットはサイトカイン、ケモカインの他に、独自の生理活性リン脂質を産生することによりそれぞれ異なるメカニズムによりリンパ球動態を制御すること、(3)特定のLPA受容体を介したシグナルがこの現象を司ること、が明らかになった。これらの新規知見は、新たなパラダイム構築に資するものであり、当初期待していた成果を大きく超えるものである。
また、領域内の共同研究として理研の石川文彦博士とヒト化マウスにおける免疫不全の原因を調べた。その結果、ヒト化マウスのリンパ節ではT細胞、B細胞は存在するものの数が少なく、さらにT細胞、B細胞領域の構築不全があることが新たにわかった。興味深いことにlymphotoxinシグナルを外部から補充することによりT細胞数と領域の構築不全は改善したが、B領域における濾胞形成は改善しないままだった。今後、ヒト化マウスの免疫系改善のために継続して共同研究を行う。

今後の研究の推進方策

これまでわれわれ独自の結果および海外の結果を併せると、LPAはリンパ節への免疫細胞の流入(ingress)と間質内の移動に関わる一方、S1Pは免疫細胞のリンパ節からの流出(egress)に主に関わることが推測される。しかし、S1P1受容体を介するシグナリングが可視化できるレポーターマウス(M. Kono et al; JCI, April, 2014)では、明らかにHEVにおいてS1P受容体の下流シグナルが活性化している。このことはS1P1シグナリングとLPAシグナリングのクロストーク現象の可能性を示唆する。このことから、研究代表者の宮坂と分担者の梅本は、S1P1ノックアウトマウスと野生マウスを比較しながら、HEV, リンパ節間質、被膜下洞、それぞれにおけるLPA依存性の免疫細胞動態を検討する。また、分担研究者の片貝は、マウスリンパ節の各ストローマ細胞サブセットに発現することが明らかになった新規分子に注目し、それらの組織、細胞内における三次元的な分布を決定するとともに、そのストローマ細胞サブセットと免疫細胞サブセットの機能的な関連を追及する。特に免疫細胞の動態制御と免疫応答における組織構造の変化に関して、イメージングを中心とした観察により明らかにしていく。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Dynamic changes in endothelial cell adhesion molecule nepmucin/CD300LG expression under physiological and pathological conditions.2013

    • 著者名/発表者名
      Umemoto, E, Takeda, A., Jin, S., Luo, Z., Nakahogi, N., Hayasaka, H., Lee, C.M., Tanaka, T. & Miyasaka, M.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 8 ページ: - (e83681)

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0083681

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Constitutive lymphocyte transmigration across the basal lamina of high endothelial venules is regulated by the ATX/LPA axis.2013

    • 著者名/発表者名
      *Bai, Z., *Cai, L., *Umemoto, E., *Takeda, A., Tohya, K., Komai, Y., Veeraveedu, P.T., Hata, E., Sugiura, Y., Kubo, A., Suematsu, M., Hayasaka, H., Okudaira, S., Aoki, J., Tanaka, T., Albers, H.M.H.G., Ovaa, H. & Miyasaka, M. (*equal contribution)
    • 雑誌名

      J. Immunol.

      巻: 190 ページ: 2036-2048

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1202025

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Four-dimensional spatial nanometry of single particles in living cells using polarized quantum rods.2013

    • 著者名/発表者名
      Watanabe, T.M., Fujii, F., Jin, T., Umemoto, E., Miyasaka, M., Fujita, H. & Yanagida, T.
    • 雑誌名

      Biophysical Journal

      巻: 105 ページ: 555-564

    • DOI

      10.1016/j.bpj

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Necessity of lysophosphatidic acid receptor 1 for development of arthritis.2013

    • 著者名/発表者名
      Miyabe, Y., Miyabe, C., Iwai, Y., Takayasu, A., Fukuda, S., Yokoyama, W., Nagai, J., Jona, M., Tokuhara, Y., Ohkawa, R., Albers, H.M., Ovaa, H., Aoki, J., Chun, J., Yatomi, Y., Ueda, H., Miyasaka, M., Miyasaka, N. & Nanki, T.
    • 雑誌名

      Arthritis & Rheum.

      巻: 65 ページ: 2037-2047

    • DOI

      10.1002/art.37991

    • 査読あり
  • [雑誌論文] GATA-1 regulates the generation and function of basophils.2013

    • 著者名/発表者名
      Nei, Y., Obata-Ninomiya, K., Tsutsui, H., Miyasaka, M., Inase, N. & Karasuyama, H.
    • 雑誌名

      Proc.Natl.Acad.Sci, USA

      巻: 110 ページ: 18620-18625

    • DOI

      10.1073/pnas.1311668110

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dendritic cells regulate high-speed interstitial T cell migration in the lymph node via LFA-1/ICAM-1.2013

    • 著者名/発表者名
      Katakai, T., Habiro, K., Kinashi, T.
    • 雑誌名

      J. Immunol.

      巻: 191 ページ: 1188-1199

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1300739

    • 査読あり
  • [学会発表] 脾臓におけるケモカインの発現と白血球動態.2014

    • 著者名/発表者名
      梅本英司、宮坂昌之
    • 学会等名
      第119回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20140327-20140329
    • 招待講演
  • [学会発表] オートタシキン/リゾホスファチジン酸によるリンパ球トラフィキングの制御機構2014

    • 著者名/発表者名
      梅本英司、竹田彰、宮坂昌之
    • 学会等名
      第1回先進イメージング医学研究会・学術集会(第7回生体イメージング研究会)
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20140110-20140111
  • [学会発表] Environmental control of high-speed T cell migration in the lymph node2013

    • 著者名/発表者名
      Katakai, T.
    • 学会等名
      The 42nd Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology
    • 発表場所
      Chiba
    • 年月日
      20131211-20131213
  • [学会発表] The role of LPA receptors on endothelial cells in lymphocyte trafficking across high endothelial venules of lymph nodes.2013

    • 著者名/発表者名
      Hata, E., Sasaki, N., Takeda, A., Umemoto, E., Hayasaka, H. & Miyasaka, M.
    • 学会等名
      The 42nd Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology
    • 発表場所
      Chiba
    • 年月日
      20131211-20131213
  • [学会発表] The role of LPA receptors on lymphocytes in lymphocyte trafficking across high endothelial venules of lymph nodes.2013

    • 著者名/発表者名
      Takeda, A., Umemoto, E., Hata, E., Sasaki, N. & Miyasaka, M.
    • 学会等名
      The 42nd Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology
    • 発表場所
      Chiba
    • 年月日
      20131211-20131213
  • [学会発表] The autotaxin/lysophosphatidic acid is a regulator of lymphocyte extravasation at the high endothelial venules of lymph nodes.2013

    • 著者名/発表者名
      Miyasaka, M., Umemoto, E., Takeda, A., Bai, Z., Cai, L., Hata, E., Tohya, K., Veeraveedu, P. & Sugiura, Y.
    • 学会等名
      15th International Congress of Immunology
    • 発表場所
      Milan, Italy
    • 年月日
      20130822-20130827
  • [学会発表] The autotaxin/lysophosphatidic acid axis regulates lymphocyte extravasation at lymph node high endothelial venules.2013

    • 著者名/発表者名
      Miyasaka, M.
    • 学会等名
      2013 FASEB Science Research Conference: Lysophospholipid and Other Related Mediators - From Bench to Clinic.
    • 発表場所
      Niseko
    • 年月日
      20130804-20130809
    • 招待講演
  • [学会発表] からだを守る免疫のしくみ.2013

    • 著者名/発表者名
      宮坂昌之
    • 学会等名
      第97回・信濃木崎夏期大学
    • 発表場所
      安曇野
    • 年月日
      20130803-20130803
    • 招待講演
  • [学会発表] 免疫細胞は自分の行き先をどのようにして知るのか? - In Vivo Veritas.2013

    • 著者名/発表者名
      宮坂昌之
    • 学会等名
      第15回免疫サマースクール(レギュラーコース講義)
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20130730-20130802
  • [学会発表] 免疫細胞の動態制御とストローマ細胞. (Regulation of immune cell trafficking by stromal cells.) .2013

    • 著者名/発表者名
      宮坂昌之
    • 学会等名
      第37回日本リンパ学会総会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20130614-20130616
    • 招待講演
  • [学会発表] リンパ節における高速T細胞遊走と組織環境2013

    • 著者名/発表者名
      片貝智哉
    • 学会等名
      第37回日本リンパ学会総会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20130614-20130616
  • [学会発表] オートタキシン/リゾホスファチジン酸は、リンパ節高内皮細静脈の基底膜におけるリンパ球の通過を制御する.2013

    • 著者名/発表者名
      梅本英司、白忠彬、蔡林君、竹田彰、東家一雄、駒井豊、Punniyakoti T. Veeraveedu、秦枝里奈、杉浦悠毅、末松誠、奥平真一、青木淳賢、宮坂昌之
    • 学会等名
      第37回日本リンパ学会総会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20130614-20130616
  • [学会発表] Autotaxin/lysophosphatidic acid はリンパ球の血管外移動の新しい調節因子である.2013

    • 著者名/発表者名
      宮坂昌之、梅本英司、竹田彰、秦枝里奈、佐々木尚子
    • 学会等名
      第55回日本脂質生化学会
    • 発表場所
      宮城県松島
    • 年月日
      20130606-20130607
    • 招待講演
  • [学会発表] リンパ節微小環境によるT細胞高速遊走の制御2013

    • 著者名/発表者名
      片貝智哉
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会 第69回学術講演会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20130520-20130522

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公開日: 2015-05-28  

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