計画研究
本研究では、X線結晶構造解析と電子顕微鏡イメージングという分解能の異なる手法を併用し、免疫-神経インターフェースの素反応を司る分子実体の構造生物学的解明を目指した。研究1(インテグリン受容体系):α6β1インテグリンについては、昨年度に確立した構造安定化デザインを持つ組み換え蛋白質の結晶化を進めた。特に本年度は、抗体の断片との共結晶化に注力し、抗α6抗体GoH3のscFvと抗β1抗体TS2/16のFabについておこなったが結晶は得られなかった。そこで本研究室で最近開発した新規デザイン抗体フラグメントであるFv-claspに変換したバージョンを試みた結果、TS2/16において良好な結晶を得ることに初めて成功した。放射光施設において3.37Å分解能の回折データ取得も果たし、構造解析の可能性が大きく高まった。研究2(セマフォリンシグナル系):Sema3A受容体のPlexin A1について、アゴニスト活性をもつ抗体のエピトープ同定と複合体の電顕イメージングを完了し、論文を投稿した。平成28年3月時点でリバイス中である。Sema4Dシグナルを阻害する環状ペプチドとPlexin B1の複合体についても構造決定と細胞を用いた阻害活性の検証が完了し、論文執筆を開始した。研究3(神経、ニッチ細胞系):ニューロン特異的受容体蛋白質sorLAについては、企業との共同研究により親和性の高い抗体を得、それとの複合体の構造解析を達成した。ニッチ細胞から産生され幹細胞の維持や分化に必須な難水溶性Wnt蛋白質について、血液タンパク質であるアファミンがそのキャリアータンパク質として機能することを発見し、幹細胞増殖活性を維持するWntタンパク質の大量精製に成功し、これを論文として報告した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究1において、ラミニン(基底膜)結合性インテグリンであるα6β1インテグリンの結晶化と回折データ取得を果たし、世界初の構造決定がH28年度中には達成できる見込みである。研究2については研究期間終了を待たずに論文化をほぼ終了し、予想を上回る速度で成果がでている。さらに研究3においては、幹細胞からの様々な細胞分化誘導に必須なWnt蛋白質の安定な生産を可能にしてハイインパクトのオープンアクセス誌eLifeに発表し、国内外の再生医療研究者との共同研究を多数開始した。よって総合的には「①当初の計画以上に進展している」と自己評価する。
上記のように、研究項目すべてで順調、もしくは予想を上回るペースで研究が進んでいる。昨年度終了時にあげていた遂行上の問題点はほぼすべて解消することが出来たため、最終年度である平成28年度は各サブテーマの仕上げと論文としてのとりまとめ、そして本領域内での共同研究の推進をおこなう。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 7件) 産業財産権 (1件)
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巻: 129 ページ: 1512-1522
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