計画研究
本研究の目的はリンパ組織特異的ストローマ細胞由来の環境因子を解明し、その情報を基に高い免疫誘導能を有し、かつ動物種を超えてヒトにも適応し得る免疫組織を人工的に新規構築する方法を確立することである。我々はストローマ細胞を用いてマウスの系でリンパ節組織を人工的に構築することを報告してきたが、本年度はリンパ組織形成において必要とされる液性因子のみを用いて、マウス生体内に人工リンパ組織の構築を検討した。種々のケモカイン、サイトカインを主とする液性因子を徐放性ハイドロゲルに含有させ、支持体コラーゲンスポンジと組み合わせてマウス腎臓被膜下へ移植を行った。3週間後、移植片内に明瞭なT細胞及びB細胞のクラスターが形成され隣接して存在した。樹状細胞、濾胞性樹状細胞も分布していた。この人工リンパ組織を持つマウスを抗原で刺激すると強い抗原特異的二次免疫反応が誘導された(論文準備中)。次にヒト型のリンパ節組織の構築を行うべく、重症免疫不全マウスにヒト末梢血リンパ球を移入して作製したヒト化マウスにヒトの液性因子を用いて人工リンパ組織形成を行った。このヒト化マウスの末梢血中ではヒトB細胞の割合が極端に少なくT細胞が大部分を占めるが、再構築リンパ節移植片においてはよく発達したT細胞クラスターに加えてやや小型ではあるが明瞭なB細胞クラスターが形成された。今後は、抗原特異的免疫誘導能について検討をするとともに、さらに組織構造の安定性を保持させるために、添加する液性因子および添加方法について検討を行う。マウス新生児の脾臓組織細胞中に(白脾髄、赤脾髄および血管系を有する)完全な脾臓を再構築する能力を持つストローマ細胞を同定した。その表面マーカーの確定、遺伝子発現パターンを確定した(論文投稿中)。また、この脾臓再構築におけるリンフォトキシンの役割について解析した(論文投稿中)。
2: おおむね順調に進展している
本研究はリンパ組織特異的ストローマ細胞由来の環境因子を解明し、その情報を基に高い免疫誘導能を有し、かつ動物種を超えてヒトにも適応し得る免疫組織を人工的に新規構築する方法を確立することを目的としているが、本年度は、種々のケモカイン、サイトカインを主とする液性因子を徐放性ハイドロゲル(medgel)に含有させて支持体となるコラーゲンスポンジを組み合わせて、マウスに「おいて強い抗原特異的二次免疫反応が誘導する人工リンパ組織の構築の条件を確定し、さらにヒトリンパ球を用いても可能であることを示した。また、リンパ節組織形成能を有するヒト間葉系細胞(ストローマ細胞)を樹立した。さらにマウスにおいて脾臓再構築能を有するストローマ細胞を同定し、その性状、機能を明確にした。研究は計画通りに進行していると考えている。さらに、3D組織構築について富山大学工学部、大阪大学工学部の研究者の他分野と共同研究を行うとともに多くの助言を受けている。
上記の目的達成のために、来年度は免疫機能を有し、組織安定性を保持するヒト人工リンパ組織の形成を検討する。具体的には、1.ヒト型液性因子を添加する方法、種類の改善を行う。大阪大学工学部の明石研究室の指導のもと、層状に配置できるハイドロゲルを使用し、脈管構造を有し、より立体構造に長ける組織構造の形成を目指す。 2.ヒト間葉系幹細胞よりリンパ組織形成能を有するストローマ細胞株を樹立する。3.ヒト間葉系幹細胞より誘導したリンパ組織ストローマ様細胞の性質を精査することで、リンパ組織形成時に必要とされる環境因子の検討を行う。4.ヒト末梢血リンパ球を移入したヒト化マウス内(in vivo)、および新規の生体適合材料と上記2のヒトリンパ組織ストローマ細胞を組み合わせて免疫機能を有する安定したヒト型リンパ節組織構築を行う。ヒト免疫能の補助、強化に応用出来る実用的な免疫組織構築を目指す。組織構築については、今後も富山大学工学部中村研究室(当領域連携研究者)、大阪大学工学部(明石研究室)から助言を受け連携しながら研究を進める。さらにイギリスOxford大学の動物学研究室Oxford Silk Reserach Groupとの共同研究を行うべく準備を進めている。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
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