研究領域 | 免疫四次元空間ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
24111009
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
渡邊 武 公益財団法人田附興風会, 医学研究所, 特任研究指導者 (40028684)
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研究分担者 |
石川 文彦 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, グループディレクター (30403918)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | ヒト型人工リンパ節 / ストローマ細胞 / T細胞 / B細胞 / 樹状細胞 / 免疫反応 / 感染防御 / がん治療 |
研究実績の概要 |
(1)本研究の目的は高い免疫誘導能を有し、かつ長期間安定なヒト型リンパ節組織を人工的に構築し、人工リンパ組織による感染防御能、腫瘍免疫誘導能、抗原特異的高親和性ヒト抗体産生能を示すことである。今年度はストローマ細胞を用いずにスキャホールドと液性因子のみを用いてリンパ節組織をマウス体内に構築することを試み成功した。LTα1β2, sRANKL,およびIL-4, GM-CSF等のサイトカイン、CCL19, CCL20, CXCL12, CXCL13などのケモカインをそれぞれ含ませた徐放性ゲルをコラーゲンスポンジ内にパックした後にBalb/cマウスの腎臓皮膜下に移植した。その結果、再現性良く、T細胞、B細胞のそれぞれのクラスターから構成されるリンパ組織が形成された。T細胞クラスター内にはFRC細胞ネットワークの形成と多数の樹状細胞の分布、B細胞クラスター内にFDCネットワークの形成を認めた。抗原NP-OVAで前免疫したマウスに、上記のサイトカイン、ケモカインを含む徐放性ゲルを用いてリンパ組織を構築した後、免疫不全SCIDマウスの腎皮膜下に移植して抗原NP-OVAで免疫を行った。人工リンパ節組織内に抗原特異的IgG抗体産生が効率よく誘導された。次に上記サイトカイン、ケモカインを含む徐放性ゲルにヒト末梢血リンパ球を混合してコラーゲンスポンジに付着させ、重症免疫不全NOGマウスの腎臓皮膜下に移植した。その結果、再現性良く、T細胞、B細胞クラスターから構成されるヒトリンパ節組織が形成された。しかし、T細胞クラスター内にFRC、B細胞クラスター内にFDCの局在は共に認めることが出来なかった。(2)HLA class I 発現ヒト化マウスを用いてWT1抗原特異的なヒトCD8+T細胞の誘導を試みた。また、ヒトIL6発現免疫不全マウスに生じるヒトT細胞の皮膚、肺への浸潤の機構解明を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はヒトリンパ組織特異的ストローマ細胞をまず樹立し、この新規に樹立したヒト由来リンパ組織ストローマ細胞の性状解析を行ったが、本年度はヒト型リンパ節組織の人工的構築に必要な液性因子の条件検討を行うべく、リンフォトキシン、ケモカイン、サイトカインなどの液性因子のみによるリンパ組織の構築を行いマウスの系で成功した。しかし、免疫不全マウス体内でのヒト免疫細胞による人工リンパ組織構築ではヒトリンパ組織の構築は出来たがリンパ組織内でのFRC, FDCネットワークの形成が不十分であったことから液性因子のみならずヒト由来ストローマ細胞の存在が必要であることが示された。最終年度(平成28年度)ではこれらの成果を総合して機能的なヒト免疫組織の人工的構築法を完成させ、その免疫誘導能を示す。
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今後の研究の推進方策 |
①人工リンパ組織内のヒト間葉系幹細胞由来ストローマ細胞から派生したと考えれるFDC, FRCストローマ細胞のケモカインや接着因子の発現、遺伝子発現パターン、人工リンパ組織形成時でのストローマ細胞出現時期および遺伝子発現パターン、ヒトリンパ球亜集団のクラスター形成過程の経時的変化などを明確にする。 ② ヒト間葉系幹細胞由来ストローマ細胞および液性因子をふくむ徐放性ゲルおよびワクチン(水痘、インフルエンザ、肝炎ウイルスなど)接種を受けた正常人の末梢血リンパ球を用いてin vivo(重度免疫不全マウスの腎臓被膜下)またはin vitro 3D 培養法にてヒト型人工リンパ組織を構築する。ついでワクチンで抗原刺激した後の抗原特異的二次免疫反応、抗体の親和性、標的細胞に対するキラーT細胞の活性などを測定する。さらに形成された人工ヒトリンパ組織を免疫不全マウスに移植し、各種ウイルスを感染させて人工リンパ組織の感染防御能を検証する。人工リンパ組織を移植した重度免疫不全マウスにヒト腫瘍細胞を同時に移植して腫瘍抗原刺激を行いその抗腫瘍活性を調べる。 ③試験管内での構築、培養法については連携研究者である富山大学工学部中村真人氏と引き続き連携して研究を進める。 ④研究分担者:石川文彦氏により作製されるヒト化マウスを用いてヒト型人工リンパ組織の構築を行う。さらにその免疫誘導能を解析する。 ⑤ヒト化マウスでのIL-6誘導性慢性皮膚炎症についてその機構を引き続き解明する(研究分担者:石川文彦)。
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