計画研究
1)ユビキチン結合モチーフUIMをもつ脱ユビキチン化酵素USP37において、UIMが基質となるユビキチン鎖に結合してそれを酵素活性中心の近傍に保持することにより、USP37のユビキチンイソペプチダーゼ活性を上昇させるために機能することを見出した(Tanno et al. 2014)。2)あるヒト腫瘍のゲノムDNAのエクソーム解析により、その腫瘍において脱ユビキチン化酵素USP8の特定の部位に高頻度で遺伝子変異が入っていることを見出した。そして、その変異によりUSP8が特定の部位で分子内切断をうけて高い酵素活性を獲得し、活性化された上皮細胞増殖因子(EGF)受容体を過度に脱ユビキチン化してそのリソソーム輸送/分解を抑制することを見出した(投稿準備中)。3)ユビキチン結合モチーフUIMをもち、ユビキチン依存的な様々な細胞機能を制御するAAA-type ATPaseであるVCP/p97と結合するタンパク質Ankrd13が、細胞膜カベオラの主要構成膜タンパク質であるカベオリン1の多量体にそのユビキチン化依存的に結合すること、そしてカベオリン1のリソソーム輸送/分解を制御することを示唆するデータを得た(未発表)4)ユビキチンリガーゼMARCH8によるユビキチン化によって結合する分子の同定と機能解析を行い、UIMをもつ新たな分子群を同定した。これらの分子をsiRNAで機能阻害した細胞において、エンドサイトーシス制御に関与する可能性のある分子を同定した。さらに、MHC class IIがユビキチン化されないマウスを用い、MHC class IIのユビキチン化消失が免疫制御に関与していることを明らかにした(Ishikawa et al. 2013)。
2: おおむね順調に進展している
1)脱ユビキチン化酵素USP37におけるユビキチン結合モチーフUIMの機能解明は、脱ユビキチン化酵素の新たな活性制御機構を明らかにしたものであり、本新学術領域の目標の1つであるユビキチン修飾系によるユビキチン認識の新たな役割の解明に貢献するものである。2)ヒト腫瘍における脱ユビキチン化酵素USP8の遺伝子変異の発見と、その変異による腫瘍形成の分子機構の解明は、本新学術領域の目標であるユビキチン化によるタンパク質制御機構の破綻による疾患の発症機構の解明を行ったものであり、本領域の目標達成に大きく貢献するものである。3)カベオリン1は細胞膜カベオラで多量体として機能しているため、その効率的なリソソーム輸送/分解のためには単量体や2量体として存在する膜タンパク質と異なり、エンドソームにおいて多量体を解離させるプロセスが必要である可能性が考えられる。Ankrd13がVCP/p97と協同的にCav1の多量体レベルを調節することを示唆する実験結果は、多量体型の膜タンパク質のユビキチン化によるリソソーム輸送/分解の新たな制御機構を見出したものであると考えている。4)ユビキチン化によって結合する分子群の同定を行い、ユビキチン化依存性エンドサイトーシスに関与する可能性のある分子を見い出しつつある。そして、ユビキチン化依存性エンドサイトーシスの定量的解析法を構築した。さらに、MHC class IIユビキチン化が変調されたマウスの作製を終了し、解析が可能な状態となった。これらの進展は、本領域の目標達成に向けて順調なものである。
1)UIMによる脱ユビキチン化酵素USP37の酵素活性制御機構のモデルを実証するため、USP37とユビキチン鎖の複合体の結晶構造解析を行う。2)脱ユビキチン化酵素USP8の遺伝子変異によるヒト腫瘍形成の分子機構を詳細に理解するため、a) USP8を切断するプロテアーゼの同定、b) 切断されたUSP8とその基質となるEGF受容体の相互作用様式の解明、およびc) USP8によるEGF受容体の脱ユビキチン化がその細胞膜からのインターナリゼーションを抑制するのか、あるいはインターナリゼーション後のエンドソームからリソソームへの輸送を阻害することでその細胞膜へのリサイクリングを亢進しているのか、を解明する。3)Ankrd13とVCP/p97による協同的なカベオリン1のリソソーム輸送の制御機構を解明するため、Ankrd13の過剰発現やVCP/p97のノックダウンがカベオリン1のリソソーム輸送/分解におよぼす効果を解析する。また、この制御機構がカベオリン1のユビキチン化に依存するかどうかを検証するため、細胞内領域のリジン残基に変異を導入したカベオリン1変異体を作製し、その変異がカベオリン1のAnkrd13やVCP/p97との相互作用、およびそのリソソーム輸送/分解におよぼす効果を解析する。4)本年度見出された、ユビキチン化依存性エンドサイトーシスに関与する可能性のある分子群の詳細な機能解析を行う。さらに、これらの分子の遺伝子改変マウスを用いて、それらの生理学的意義を追求する。また、MHC class IIのユビキチン化消失の重要性を、本年度作製したMHC class IIのユビキチン化変調マウスを用いて検討する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
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