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2014 年度 実績報告書

ユビキチン修飾系による膜タンパク質の輸送制御機構

計画研究

研究領域ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム
研究課題/領域番号 24112003
研究機関東京工業大学

研究代表者

駒田 雅之  東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (10225568)

研究分担者 石戸 聡  昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (10273781)
研究期間 (年度) 2012-06-28 – 2017-03-31
キーワードユビキチン / 脱ユビキチン化酵素 / エンドサイトーシス / 受容体ダウンレギュレーション / 腫瘍 / MHC class II / 樹状細胞 / 抗原提示
研究実績の概要

クッシング病をひき起こす脳下垂体腫瘍において、脱ユビキチン化酵素USP8の14-3-3タンパク質結合モチーフRSYSSPに体細胞ホットスポット変異を見出した。USP8変異体の機能解析を行った結果、変異体は14-3-3タンパク質結合能を喪失しており、その結果、14-3-3結合モチーフのN末端側で分子切断を受けやすくなっていた。切断により生じたC末端側の40-kDa領域(C40)はほぼ酵素活性ドメインのみからなり、全長型USP8に比べ高い酵素活性を獲得していた。C40は、上皮細胞増殖因子(EGF)刺激した細胞においてユビキチン化されたEGF受容体を過度に脱ユビキチン化することにより、活性化されたEGF受容体のリソソーム輸送/分解(ダウンレギュレーション)を阻害した。その結果、活性化EGF受容体が細胞膜上に残存して細胞増殖シグナルを持続的に発信することで、脳下垂体細胞の腫瘍形成を誘導することが明らかとなった。
また、免疫応答におけるMHC class II(MHC-II)のユビキチン化の消失意義を検討する目的で、MHC-IIが恒常的にユビキチン化されているマウスを作成した。このマウスではMHC-IIによる免疫応答が低下していた。さらに、このマウスの定常状態の末梢血中にB細胞数の低下を認めた。このB細胞数の低下はMHC-II欠損マウスでは顕著に見られなかった。これらの結果から、MHC-IIのユビキチン化消失が適正な免疫応答に必須であることが明らとなり、さらに定常状態における末梢でのB細胞数の維持にも重要であることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題の採択時の交付申請書に、「ユビキチン化修飾による細胞膜タンパク質のダウンレギュレーション(リソソーム輸送・分解)の生理的、病理的な意義を解明する」と記載したが、昨年度までに、細胞膜タンパク質のリソソーム輸送を調節する脱ユビキチン化酵素USP8の遺伝子変異がクッシング病をひき起こすことを見出し、その変異によるクッシング病の発症機構を解明した。クッシング病にはこれまで有効な治療薬がないことから、本疾患は厚生労働省の特定疾患(いわゆる難病)に指定されており、治療薬の開発に向けてその発症メカニズムの解明が待ち望まれていた。
これは、本課題採択時には予想できなかった医学的に大きな波及効果をもたらす研究成果であることから、本研究科は期待以上に進捗していると考えている。

今後の研究の推進方策

1. 脱ユビキチン化酵素USP8の変異によるクッシング病の発症機構
USP8の14-3-3結合モチーフの変異がクッシング病をひき起こす分子機構について、以下の解析を行う。まず、USP8の14-3-3結合モチーフ変異体は分子切断を受けて活性化することがわかっているため、そのプロテアーゼを同定する。また、USP8が切断により活性化される分子機構が不明であるため、全長型USP8と切断されて生じるC末端側の酵素活性ドメインC40のX線結晶構造解析を行い、それらの構造を比較することで活性化機構を解明する。最後に、USP8変異体がEGF受容体以外のタンパク質を脱ユビキチン化することでクッシング病をひき起こしている可能性を考え、USP8変異体の新規の基質タンパク質を探索する。
2. MHC-II分子のリソソーム輸送/分解の制御機構とその生理的意義
感染によってMHC class II(MHC-II)のユビキチン化が消失することにより感染防御に必要な免疫応答が惹起されるという仮説を検証するため、感染時にMHC-IIのユビキチン化消失が起きないマウス(MHC-II-ubi-KI)を用い、MHC-IIのユビキチン化消失の意義を検討する。MHC-II-ubi-KIマウスのモデル抗原(OVA等)に対する免疫応答、特にTh1/Th2のバランスをIgG産生量を指標に検討する。さらに、MHC-IIのエンドサイトーシスを誘導するユビキチン鎖に結合する興味ある分子を見出しており、この分子のMHC-IIユビキチン鎖形成、エンドサイトーシスへの関与を検討する。これらの知見をもとに、ユビキチン化依存的な膜タンパク質輸送による免疫制御機構とその生理的意義を解明する。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 4件) 備考 (4件)

  • [雑誌論文] Mutations in the deubiquitinase gene USP8 cause Cushing’s disease2015

    • 著者名/発表者名
      Reincke M, Sbiera S, Hayakawa A, Theodoropoulou M, Osswald A, Beuschlein F, Meitinger T, Mizuno-Yamasaki E, Kawaguchi K, Saeki Y, Tanaka K, Wieland T, Graf E, Saeger W, Ronchi CL, Allolio B, Buchfelder M, Strom TM, Fassnacht M & Komada M
    • 雑誌名

      Nat. Genet.

      巻: 47 ページ: 31-38

    • DOI

      10.1038/ng.3166

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The nucleolar ubiquitin-specific protease USP36 deubiquitinates and stabilizes c-Myc2015

    • 著者名/発表者名
      Sun XX, He X, Yin L, Komada M, Sears RC & Dai MS
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA

      巻: 112 ページ: 3734-3739

    • DOI

      10.1073/pnas.1411713112

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 見えてきたユビキチンを介する核小体の多彩な機能2015

    • 著者名/発表者名
      川口紘平、駒田雅之
    • 雑誌名

      ファルマシア

      巻: 51 ページ: 300-304

  • [雑誌論文] 難病“クッシング病”発症の分子メカニズム2015

    • 著者名/発表者名
      川口紘平、駒田雅之
    • 雑誌名

      バイオサイエンスとインダストリー

      巻: 73 ページ: 印刷中

  • [学会発表] 脱ユビキチン化酵素USP8の機能獲得型変異がクッシング病を引き起こす2015

    • 著者名/発表者名
      駒田雅之
    • 学会等名
      第26回 間脳・下垂体・副腎系研究会・教育講演
    • 発表場所
      ロシュ・ダイアグノスティックス 本社(東京都)
    • 年月日
      2015-03-14
    • 招待講演
  • [学会発表] 脱ユビキチン化酵素の機能獲得型変異によるヒト腫瘍の発症機構2014

    • 著者名/発表者名
      Martin Reincke、Silviu Sbiera、早川哲、Marily Theodoropoulou、Andrea Osswald、Felix Beuschlein、Thomas Meitinger、水野-山崎英美、佐伯泰、田中啓二、Thomas Wieland、 Elisabeth Graf、Wolfgang Saeger、Cristina Ronchi、Bruno Allolio、Michael Buchfelder、Tim Strom、Martin Fassnachat、駒田雅之
    • 学会等名
      第37回 日本分子生物学会大会・一般ポスター発表
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2014-11-27
  • [学会発表] 核小体ストレス応答における分解性及び非分解性ユビキチン化修飾の機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      川口紘平、齊藤尚吾、早川哲、田中利明、山本章嗣、駒田雅之
    • 学会等名
      第37回 日本分子生物学会大会・ワークショップ
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2014-11-26
  • [学会発表] Ankrd13 family of ubiquitin-binding proteins regulates VCP function in endosomal sorting of caveolin-12014

    • 著者名/発表者名
      Burana Daocharad、丹野秀崇、駒田雅之
    • 学会等名
      第37回 日本分子生物学会大会・一般ポスター発表
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2014-11-26
  • [学会発表] Impairment of ubiquitination-dependent receptor downregulation in human tumor2014

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Komada
    • 学会等名
      新学術領域「ユビキチン制御」第1回 国際シンポジウム
    • 発表場所
      国際高等研究所(京都府)
    • 年月日
      2014-11-10
    • 招待講演
  • [学会発表] ヒト腫瘍におけるユビキチン化依存的な増殖因子受容体ダウンレギュレーションの破綻2014

    • 著者名/発表者名
      駒田雅之、早川哲、水野-山崎英美
    • 学会等名
      第87回 日本生化学会大会・シンポジウム
    • 発表場所
      京都国際会館(京都府)
    • 年月日
      2014-10-16
    • 招待講演
  • [学会発表] 核小体ストレス応答における分解性及び非分解性ユビキチン化修飾の機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      川口紘平、齊藤尚吾、早川哲、田中利明、山本章嗣、駒田雅之
    • 学会等名
      第87回 日本生化学会大会・一般口頭発表
    • 発表場所
      京都国際会館(京都府)
    • 年月日
      2014-10-16
  • [学会発表] Impaired receptor downregulation in Cushing’s disease2014

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Komada
    • 学会等名
      Improving Outcome of Cushing´s Syndrome Symposium “IMPROCUSH”
    • 発表場所
      Carl Friedrich von Siemens Stiftung(ドイツ・ミュンヘン)
    • 年月日
      2014-10-13
    • 招待講演
  • [学会発表] Loss of MHC II ubiquitination induces negative consequence to dendritic cells2014

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Ishido
    • 学会等名
      8th International Workshop on Antigen Processing & Presentation
    • 発表場所
      フィラデルフィア(アメリカ合衆国)
    • 年月日
      2014-06-10 – 2014-06-13
  • [備考] 東京工業大学ホームページ「研究最前線」

    • URL

      http://www.titech.ac.jp/news/2014/029324.html

  • [備考] 駒田研究室ホームページ

    • URL

      http://www.komada-lab.bio.titech.ac.jp

  • [備考] 駒田研究室ホームページ

    • URL

      http://www.bio.titech.ac.jp/laboratory/komada/index.html

  • [備考] 石戸研究室ホームページ

    • URL

      http://www.shoyaku.ac.jp/labosite/kansen/index.html

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公開日: 2016-06-01  

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