計画研究
1. 脱ユビキチン化酵素USP8の変異によるCushing 病の発症機構:変異USP8を切断・活性化するプロテアーゼの各種阻害剤に対する感受性と、その活性を検出する簡便なin vitroアッセイ系を確立した。また、USP8が脱ユビキチン化する新規の基質タンパク質の探索を行い、その候補として脳下垂体で特異的に発現する細胞膜タンパク質を同定した。2. カベオリンのリソソーム輸送の制御機構:ユビキチン結合タンパク質Ankrd13によるユビキチン化依存的なカベオリンのリソソーム輸送の制御機構を理解するため、カベオリンに付加されるユビキチン鎖のタイプとAnkrd13が認識するユビキチン鎖のタイプを質量分析法により解析し、いずれもLys63連結型のユビキチン鎖であることを明らかにした。3. MHC class II 分子のリソソーム輸送の制御機構:MHC class II のユビキチン・リガーゼMARCH-I欠損細胞を用い、MHC class IIのユビキチン化がその細胞膜へのサイクリングを抑制することによりMHC class IIの分解を促進していることを明らかにした。さらに、インターロイキン-10が樹状細胞ではなくマクロファージにおけるMARCH-Iの発現を亢進させることにより免疫抑制機能を発揮することを明らかにした。また、B細胞におけるMHC class IIのユビキチン化による制御がその抗体産生形質細胞への分化に必要であることも明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
脱ユビキチン化酵素USP8の変異によるCushing 病の発症機構に関し、その切断・活性化を担うプロテアーゼを同定するための実験準備が整った。また、Cushing 病の発症に重要な役割を果たす可能性のあるUSP8の新たな基質タンパク質の候補が同定され、Cushing 病の発症機構の解明にさらに一歩近づいたと言える状況である。また、カベオリンのリソソーム輸送の制御機構に関し、VCPとAnkrd13タンパク質がエンドソーム上で協調してユビキチン化されたカベオリン多量体を単量体に解離することにより、多量体を形成する細胞膜タンパク質を効率よくリソソームに輸送する新たな制御機構を解明した。MHC class II 分子のリソソーム輸送の制御機構に関しては、MARCH-I欠損マウスの解析から、腸管粘膜固有層において制御性T細胞が増加していることを見出した。この現象はMHC class IIのユビキチン化部位を欠失したマウスにおいても認められたことから、MARCH-IによるMHC class IIのユビキチン化による制御が腸管における免疫恒常性に関与していることが示唆された。さらに、ユビキチン化された膜タンパク質に特異的に結合する分子群を同定し、それら分子の機能阻害実験から、ユビキチン化による膜タンパク質輸送の制御に関与する新規候補分子を見出している。
1. 脱ユビキチン化酵素USP8の変異によるCushing病の発症機構:USP8変異がCushing病をひき起こす分子機構の解明、およびCushing病治療薬への応用展開をめざし、以下の解析を行う。今年度に確立したin vitro USP8切断活性の検出アッセイを用い、カラムクロマトグラフィーを組み合わせてUSP8を切断するプロテアーゼの同定を行う。また、今年度に候補として同定されたUSP8変異体の新規の基質タンパク質についてその検証を行い、さらにその基質タンパク質がCushing病の発症にどのように関わるかを解析する。さらに、Cushing 病には効果的な薬物療法がなく(厚生労働省の特定疾患に指定)、高度な技術を要する外科手術が完治のための唯一の治療法となっている。そこで、Cushing病の治療薬開発に向け、USP8阻害化合物を探索する。天然物化合物のスクリーニングと、コンピューターを用いたin silicoのドラッグ・デザインを組み合わせて行う。2. MHC class II 分子のリソソーム輸送の制御機構:MHC class II のユビキチン化の消失が腸管粘膜の固有層において制御性T細胞を増加させる可能性を見出した。この現象の分子機構を解明する。さらに、腸内細菌とMARCH-Iとの関連について検討し、制御性T細胞の増加・腸内細菌・MARCH-Iの関連を明らかにし、MARCH-Iを介した腸内免疫制御における腸内細菌の役割を解明する。腸管に存在する制御性T細胞は食物アレルギーに関連するとされていることから、MARCH-Iのアレルギー応答への関与についても検討する。さらに、MHC class IIのエンドサイトーシスを誘導するユビキチン鎖に結合するHECT型E3ユビキチンリガーゼを見出したため、この分子のユビキチン鎖形成とエンドサイトーシスへの関与について検討する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 5件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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