ユビキチンコードの多様性の一端を担っているユビキチンの翻訳後修飾について、さらに解析を進めた。ユビキチンのアセチル化修飾の機能解析から、ユビキチン分子内の多重翻訳後修飾(アセチル化とポリユビキチン化)が互いを制御するクロストークが明らかになった。そこでこの知見を発展させて、ユビキチン修飾間のクロストークについて検討を行った。 細胞内に最も豊富に形成されうるユビキチン多重修飾は2カ所以上でのユビキチン連結、すなわち分岐型ユビキチンであると考えられる。しかし分岐型ユビキチンはこれまで定量方法が存在しなかったため、その存在量や機能的意義については良く分かっていなかった。本研究では、K48鎖とK63鎖からなる分岐型ユビキチン鎖の定量方法を開発し、K48/K63分岐鎖が細胞内に豊富に存在することを見出した。分岐によりK63鎖は脱ユビキチン化を受けにくくなることから、ユビキチン多重修飾が機能的にクロストークする一例を明らかにした。 さらに分岐鎖形成酵素としてE3ユビキチンリガーゼHUWE1を同定した。HUWE1は炎症性サイトカインであるinterleukin-1b(IL-1b)依存的に分岐鎖を形成し、NF-kB標的遺伝子であるTNF-aやIL8の遺伝子発現制御を正に調節した。またレポーターアッセイによるNF-kB転写活性測定においても、HUWE1はTRAF6依存的なNF-kB転写活性化に必要だった。ユビキチン分子内の多重翻訳後修飾がユビキチンコードのクロストークを引き起こす分子機構が示唆された。
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