計画研究
① Doxycyclin(Dox)添加によって BARD1に対するshRNAと同時にHP1との結合を阻害する変異型のBARD1を発現誘導して、内因性BARD1と変異体を置換しうるHeLaおよびU2OS細胞株を樹立した。この細胞を用いて、BARD1とHP1の結合阻害がK63結合型ユビキチン鎖を介したBRCA1-Abraxas-RAP80複合体のDNA二本鎖損傷部位への集積には影響を与えず、BRCA1およびDNA末端切除に必須なCtIP複合体の集積を阻害することを明らかにした。②HERC2ユビキチンリガーゼのDNA損傷応答における役割。HERC2のC末端HECTドメインのリコンビナント蛋白質を生成し、HERC2抗体を作成した。質量分析計によるHERC2結合蛋白質の解析から、BRCA1とともに、DNAヘリカーゼ複合体がHERC2と結合することが判明した。さらにDox誘導性にHERC2に対するshRNAを発現する細胞を樹立したところ、HERC2の発現抑制によってこのヘリカーゼ複合体の構成因子に変化が認められた。③ Dox誘導性KAP1ノックダウンHeLaおよびU2OS細胞を樹立した。④ DNA二本鎖損傷応答に必要であることが知られている脱ユビキチン化酵素BAP1の免疫沈降物の質量分析計による解析からDNA損傷依存的にセリンスレオニンキナーゼ複合体と結合することが明らかとなった。重要なことにこのキナーゼはin vivoにてBAP1をモノユビキチン化し、安定化した。⑤ユビキチンK6鎖抗体については平成25年度とは異なったペプチドを用いてマウスおよびラットを免役し、モノクローナル抗体作を再度試みたが、有用なクローンは得られなかった。
2: おおむね順調に進展している
DNA二本鎖切断における相同組換え修復ではK63鎖形成/ユビキチン結合蛋白質RAP80を介したBRCA1-Abraxas複合体の集積がこれまでに明らかにされた。しかし、この複合体の機能としてこれまでにわかっていることは過剰な相同組換えの抑制であり、肝心な相同組換えを行うBRCA1複合体がどのようにATM依存的に誘導されるかはわかっていなかった。これに対し、本研究ではBRCA1のDSB局所への安定維持に必要なBARD1とHP1の結合を介した新規メカニズムを発見した。この経路はこれまでにあまり解析されていないため、これを突破口として、今後新たな知見が得られることが予想される。また、HERC2解析、KAP1解析、BAP1解析に必要なreagentもそろい、今後これらを元に新規解析結果が得られることが予想される。
①Dox誘導性に内因性BARD1とHP1との結合を阻害する変異体を置換しうるHeLaおよびU2OS細胞を用いて、BARD1とHP1の結合阻害が、RNF8/RNF168によるユビキチン鎖を介したBRCA1-Abraxas-RAP80複合体、BRCA1/BACH1(FANCJ)複合体およびBRCA1/CtIP複合体に機能にどのような影響を与えるかを解析し、DNA末端切除、DNAストランド侵入におけるユビキチン鎖による阻害作用あるいは調整作用を明らかにする。②HERC2と結合するDNAヘリカーゼ複合体のそれぞれのサブユニットがHERC2のE3リガーゼ活性の基質となり得るかを検討し、これらの相互作用がDNA相同組換え修復、複製後修復および複製調節に及ぼす影響を解析する。さらに、HERC2と相補的な機能を果たす可能性のあるHERC1をHERC2と同時にDox誘導性にノックダウンする細胞を樹立し、その表現型を、DNA損傷応答を中心に解析する。③KAP1のN末端に存在するRINGドメインに変異を加えたE3活性死活型変異体をadd-backした細胞株を樹立し、その表現型を、DNA損傷応答とヘテロクロマチン形成を中心に解析する。④ポリコームRING1Bと相同性のあるBRCA1とH2Aの結合部位に変異を加え、結合を阻害するDox誘導性BRCA1 変異体置換細胞を作成し、その表現型をH2AのUb化とヘテロクロマチン形成を中心に解析する。⑤引き続きK6ポリユビキチン鎖の特異抗体の作成、特性の解析を行う。⑥ガン治療への応用を考慮し、PARP阻害剤との合成致死性を明らかにしたUNC0638およびChetocinによるBRCA1/BARD1のDNA損傷応答への作用に関して解析する。
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http://www.marianna-u.ac.jp/t-oncology/index.html