研究実績の概要 |
ユビキチン修飾はDNA損傷応答に必須な役割を果たしており、DNA損傷のタイプに応じて異なったE3リガーゼが機能している。研究代表者は新規作成した抗HERC2抗体を用いた質量分析計によってHERC2結合蛋白質を同定した。本年度はこのうちDNAヘリカーゼであるBLM複合体について重点的に解析を行った。HERC2の免疫沈降物のウェスタンブロットにてBRCA1、BLM, Top3a, RMI1, RMI2, RPA1およびRPA2の結合が確認された。siRNAを用いた構成サブユニットの発現抑制による結合状態の解析から、BLM/Top3a/RMI1/RMI2複合体はBLMを介して結合していることが判明した。一方、BRCA1とRPAはBLM非依存的にHERC2に結合していた。おもしろいことに非ストレス状態の可溶性核分画におけるBLM-RPA結合はHERC2に依存しており、Dox誘導性shRNAによるHERC2発現抑制あるいはMitomycin C によるDNA複製ストレスによってこの結合は顕著に阻害された。この際いずれの条件下でも、RPAの複合体形成様式が大きく変化し、分子量が似た小さな複合体になることがSuperose 6を用いたゲル濾過解析から明らかとなった。BLM複合体はDNAのG-quadruplex構造を解除するのに必須の役割を果たしているが、HERC2の抑制によってG-quadruplexは顕著に増加し、BLM機能にHERC2が重要な役割を果たしていることが示唆された。また、HERC2の抑制によってChk1の中等度の活性化が認められたが、逆にHERC2抑制細胞ではDNA複製ストレス時にChk1の本来の活性化が起こらないことが明らかとなった。これらのHERC2の作用にHERC2のE3活性がどのように関与しているのかを明らかにするため、CRISPR/Cas9を用いてホモおよびヘテロにHERC2のC末端77アミノ酸を欠失したHCT116細胞を作成した。欠失アミノ酸にはHECTドメインのユビキチン結合部位が含まれているが、HERC2のタンパク質安定性に影響がないことをウェスタンブロットにて確認した。
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