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2012 年度 実績報告書

ユビキチン識別タンパク質によるポリユビキチン鎖情報のデコード機構とその役割

計画研究

研究領域ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム
研究課題/領域番号 24112007
研究機関首都大学東京

研究代表者

川原 裕之  首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (70291151)

研究分担者 横田 直人  首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (40610564)
研究期間 (年度) 2012-06-28 – 2017-03-31
キーワードユビキチン / ユビキチンコード / プロテアソーム / タンパク質品質管理 / BAG6 / アグリソーム / 凝集体形成 / UBA
研究実績の概要

我々はこれまで、ユビキチン受容体、およびその新規パートナーとしてBAG6を同定し、ポリユビキチン鎖認識の多様性が持つ生理的意義の解析を続けてきた。最近、我々は、BAG6がユビキチン認識を介して新合成タンパク質の品質管理に必須の働きを有することを突き止めた(JCB 2010)。すなわち、不良タンパク質の疎水性領域をBAG6が特異的に認識・捕獲し、これらをユビキチン受容体群と協調して、分解系に提示するのである。さらに我々は最近、神経芽細胞において、BAG6が疎水性不良タンパク質の凝集、及びその過程で引き起こされる病理的細胞死の防御に重大な役割を果たすことを見いだし、神経系におけるBAG6の必須機能を初めて解明した(JCB 2010)。
昨年8月、我々のJCB 論文発表後に、BAG6が1回膜貫通タンパク質の疎水性ドメイン認識に必須であること (Mariappan et al., Nature 2010)、及びBAG6が細胞膜アッセンブリに失敗した疎水性タンパク質のユビキチン依存的分解に機能していること (Hessa et al., Nature 2011; Wang et al., Mol. Cell 2011) が米英のグループから相次いで追認報告された。このように、BAG6研究は、当初の予想をはるかに超えた領域にまで急速に拡大しつつあると同時に、激しい国際競争の幕が今まさに切って落とされようとしている状況である。
我々のこれまでの研究により、BAG6を介したユビキチン識別システムは、新合成タンパク質の品質管理、膜タンパク質のアッセンブリ、神経細胞死防御、および免疫始動系の根幹をなしていることが明確となってきた。しかし、その分子メカニズムの解析は緒についたばかりである。精緻極まる本システムの全貌解明に向けて、喫緊の課題が山積となっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究において、BAG6が「新合成不良タンパク質」を認識するために必要なドメインの絞り込みをほぼ完了した。さらに、BAG6が基質を適切に処理するために必要なパートナー分子を質量分析の手法で100種類以上同定した。これらのうちの代表的なものをピックアップして、遺伝子発現の抑圧実験などを行ったところ、これらが新合成不良タンパク質の代謝に必須であることを新しく発見した。また、BAG6はN末端ユビキチン様配列を利用して複数のユビキチン受容体・ユビキチンリガーゼ・脱ユビキチン化酵素群などと会合し、巨大複合体を形成することを見いだした。重要なことに、BAG6はハンチントン病などの病因となるユビキチン陽性の核内封入体形成をコントロールすることなど、BAG6複合体が神経変性疾患の病態とも密接に関わることが我々の細胞レベルでの解析から明らかとなってきた。さらにこれまで知られていたBAG6の標的蛋白質群である「新合成不良タンパク質」に加えて、膜蛋白質のアッセンブリと品質管理にBAG6が必須の役割を果たす事を初めて解明した。抗原提示されるモデル膜タンパク質として新しくIL-2レセプターを取り上げ、抗原提示の定量的評価系の作出すると同時に、BAG6がMHCクラスIへの抗原ペプチド供給に重要の役割を果たすことを見いだした。以上の成果は、当初我々が想定したものを大きく超えており、充分な成果を挙げられたものと考えている。

今後の研究の推進方策

我々の研究成果(J. Cell Biol. 2010)は、多くの一流ジャーナルに引用され、世界的な注目を集めている状況である。本申請研究で得られた成果を速やかに発表し、世界に問うことを急ぎたい。また、我々が見出した新合成不良タンパク質の代謝システムは、一群の膜タンパク質(TAタンパク質)の小胞体膜アッセンブリにも必須であることが明らかになりつつある。今後、リボソームにて新合成されたポリペプチドが細胞内で機能し、生命を支える仕組みを解明していきたいと考えている。これまでの我々の研究から、BAG6をコアとした新しいポリユビキチン化タンパク質識別システムが細胞の恒常性監視と維持に必須な役割を演じていることが明確になりつつある。本課題ではBAG6複合体が新合成不良タンパク質を特異的に峻別する機構とその生理的・病理的役割の解明を中心に、構造生物学・遺伝学・プロテオミクス・細胞生物学など本領域に参加する様々な専門家と共同で徹底的なアプローチを進める。また、本研究では、未解明な点が多い核内ポリユビキチン認識の生理的意義を解明するべく、BAG6を介したユビキチン識別システムの機能解明に挑む。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] BAG6/BAT3: emerging roles in quality control for nascent polypeptides2013

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Kawahara
    • 雑誌名

      J. Biochem.

      巻: 153 ページ: 147-160

    • DOI

      doi: 10.1093/jb/mvs149

    • 査読あり
  • [学会発表] BAG6複合体による新しい新合成ポリペプチドの品質管理機構2013

    • 著者名/発表者名
      川原裕之
    • 学会等名
      第86回日本生化学会大会シンポジウム
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2013-09-13
    • 招待講演
  • [学会発表] BAG6 is essential for selective elimination of aggregation-prone defective proteins.2013

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Kawahara
    • 学会等名
      The 35th Naito Conference
    • 発表場所
      ガトーキングダム札幌
    • 年月日
      2013-07-09 – 2013-07-13
    • 招待講演
  • [学会発表] BAG6-プロテアソーム複合体を介した易凝集性タンパク質の品質管理2012

    • 著者名/発表者名
      川原裕之
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会シンポジウム
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      2012-12-14
    • 招待講演
  • [学会発表] ユビキチン識別タンパク質複合体による新合成ポリペプチド鎖の品質管理2012

    • 著者名/発表者名
      川原裕之
    • 学会等名
      新学術領域研究「ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム」Kick-offシンポジウム
    • 発表場所
      京大医学部
    • 年月日
      2012-09-26
    • 招待講演
  • [学会発表] 易凝集性タンパク質の品質管理におけるBAG6複合体の役割2012

    • 著者名/発表者名
      川原裕之
    • 学会等名
      第12回 日本蛋白質科学会 年会ワークショップ
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2012-07-21
    • 招待講演
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://www.biol.se.tmu.ac.jp/labo.asp?ID=celche

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公開日: 2018-02-02  

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